2023 Fiscal Year Annual Research Report
超香紋:分子レベルでニオイを識別する流体熱力学「全分子量スペクトル」法の創出
Project/Area Number |
21K18859
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
柴 弘太 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 高分子・バイオ材料研究センター, 主幹研究員 (20638126)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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Keywords | ニオイ / 流体熱力学 / 質量分析 / 分子量 / モバイル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、物理的に分子を測る独自手法(流体熱力学質量分析;AMA)をもとに、ニオイ識別のための新コンセプト「超香紋」を提案する。AMAは従来の質量分析に必須の試料のイオン化を必要としないため測定系を大幅に小型化でき、モバイル用途が視野に入る。また、物質固有の分子量をリアルタイム測定可能という特長を有する。そこで、ニオイを吸着材へ捕集し、昇温・吸引により脱離させた分子をAMAによって逐次測定することで、ニオイの全成分に基づく「全分子量スペクトル=超香紋」を取得する。これはニオイの中身を反映するため、指紋認証のように、ニオイ間の比較を定量的な情報に基づいて超高精度に行うことができる。様々な吸着材を用いることで、いかなるニオイに対しても全分子量スペクトルを取得するための条件最適化・指針獲得を行う。以上のように、呼気診断など挑戦的かつ有意義なニオイ識別を、手軽に実施するための成果を創出する。 これまで、上記目的に向けた検討を進める中で、予期せず気体測定のための新たな手法を創出した。この手法は色の変化に基づいて気体を識別することができるものであり、詳細な検討の結果、色の変化は気体の分子量および粘度に依存することを見出した。これら二つの量は相互に依存しないため、原理的に一種類の気体は一つの色を与えることになる。つまり、この色自体をその気体に固有の指紋のように扱うことができる。この成果はAdvanced Science誌に掲載され、特許出願、プレスリリース、学会発表を終えてさらに掘り下げているところである。今後は、この技術と、これまで継続して検討を進めてきたガスクロマトグラフィーを利用した分離・濃縮機構を組み合わせることで、ニオイに含まれる構造異性体にも対応可能な超香紋の実現を目指した研究を推進していくつもりである。
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