2021 Fiscal Year Research-status Report
Three-dimensional spin information mapping by spin noise spectroscopy
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21K18861
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
足立 智 北海道大学, 工学研究院, 教授 (10221722)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小田島 聡 北海道大学, 電子科学研究所, 特任准教授 (20518451)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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Keywords | 電子スピン / 核スピン / スピンノイズ / マッピング |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度7月の採択決定後,以下の研究を実施した. 1.AlGaAsバルクの2次元TRKRマッピング:スピンノイズ分光の標準サンプルとして,研究例の少ないnドープAlGaAsバルク(Al=0.15)を選択した.まず,時間分解カー回転(TRKR)と全光核磁気共鳴(AONMR)分光を行い,電子・核スピン結合系ダイナミクスの基礎データを取得した.GaAsと比較して,電子g因子,核スピン形成時間,核スピン緩和時間などの大きな違いを検出した.電子g因子は+0.173とGaAsとは符号が異なり,絶対値も半分以下(GaAsの電子g因子は-0.44)であるが,観測される核スピン分極は核磁場として1.4 Tに達する(GaAsでは~0.1 T).nドープGaAsバルクでのスピン結合系ダイナミクスのパラメータは大きく異なるが,同じ形成モデル(基盤研究Bで開発した統一的な電子・核スピン結合系ダイナミクスモデル)で説明できることが分かった.これらの基礎データはスピンノイズ分光データと比較して,そのデータ検証に用いることができる.これらの結果は学会発表したが,Al密度依存性を加えて論文として準備中である. 2.スピンノイズ分光光学系の構築:基礎データの取得がほぼ終了したので,スピンノイズ分光系を既存のTRKR分光系に組み込んだ.長時間測定が必要なので,冷凍機型のクライオスタットを使用し,スピンノイズ測定を行った.磁場印加の有無での差を取ることで,スピンノイズの検出に成功したが,S/N比向上のための電気ノイズの低減,リアルタイムスペアナでの同時観測帯域シフトなどが必要で,その計測プログラムの作成を急いでいる.更に,もう1つの試料として選択したErドープYSO結晶について,フォトンエコーなどの時間域分光,ホールバーニングなどの周波数領域分光を行い,基礎データを取得すると同時に学会発表可能な多くの成果を得た.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
スピンノイズ分光の標準試料として,選んだnドープAlGaAsとEr添加結晶の基礎データ取得において,思いがけない成果が得られ,それを追求したため,初期に計画した室温でのスピンノイズ測定まで時間の制約上の理由で達成することができなかったが,低温での基本部分は計画通り成功している.基礎データ取得過程で,多くの成果が得られ,多数の学会発表はもとより,学術論文2編,さらに査読中1編,準備中が3編あり,次年度には更なる進展が期待できる.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は今年度の成果に基づき,以下の研究を実施予定である. 1.スピンノイズ信号の増幅とS/N比の改善:リアルタイムスペアナとバランス検出器の間にノイズの少ないRFアンプを導入するとともに,信号が最大となる非共鳴励起波長を探索する.スピンノイズ分光では,磁場印加の有無の差分スペクトルを取得する必要がある.電磁石では磁極の磁化(~数mT)が避けられないが,30 mTの印加で150 MHz領域に核磁気共鳴ピークが出現するため,磁極の磁化によるスペクトルピークのシフトの影響は大きい.これをを伴わない磁場印加を永久磁石を用いて行うことで,スペクトルピーク位置の精度を上げるとともに,電磁石電源からの大きな電気ノイズを除去する.2次元スキャンの測定時間は,原理的に使用しているリアルタイムスペアナの性能に依存するが,少ない積算回数で高いS/N比の信号データを得るためにS/N比の改善は必要である.
2.3次元スピンノイズマッピングの試行 項目1の測定系改良後,光学系に試料厚み方向の掃引機能を加えることで,3次元スピンノイズマッピング法を確立する.まずは,試料の位置を対物レンズの焦点方向でスキャンすることで,厚み分解SNスペクトルの取得を目指す.この時,レーリー長より小さなステップで掃引することが肝要である.更に,実際のナノデバイスサンプルを用意し,3次元SNマッピングが新規スピン構造探査に有望であることを実証する.まずは,n-AlGaAsバルク上に作製したナノ加工物(深さや幅が異なる溝や穴など)を試用するが,段階的に複雑な構造を加えたり,ドーピング濃度の異なる領域を設けることで,電子のドープ量をも含む包括的なスピン情報の可視化を目指す.n-AlGaAsバルクで成功した場合は,Er添加結晶でも試行する.
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Causes of Carryover |
分担者の小田島氏の分担金20万円のうち,未執行額61,437円を次年度を合わせて使用したい旨の連絡があり,承諾した.協力いただいている試料のプロセス加工等に不足が予想される薬剤の納期が年度内に間に合わなかったため,次年度の発注としたことによるものである.
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Research Products
(17 results)