2022 Fiscal Year Annual Research Report
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21K18867
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
杉本 宜昭 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 教授 (00432518)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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Keywords | 走査プローブ顕微鏡 |
Outline of Annual Research Achievements |
2つの原子の間の化学結合を開裂して、量子もつれ状態にある原子対を生成して検出することを目的とした。原子分解能を持つ原子間力顕微鏡(AFM)により、鋭い針先端の1つの原子を、表面の1つの原子に精密に近づけたり離したりすることで、化学結合を形成したり、破断したりすることができる。例えば、不対電子を持つ2つの原子を接近させると、共有結合が生じる。その時、結合軌道に2つの電子が収容されるが、この2つの電子は水素分子と同様にスピン1重項状態をとる。この状態で2つのSi原子を引き離すと、2つのスピンは量子もつれ状態になっていると考えられる。2原子の間に働く化学結合力は、2原子の相対的なスピンの向きに依存することが知られている。化学結合を開裂して、ある時間経過してから、再び原子対を接近させながら化学結合力を計測し、開裂時の化学結合力と比較することによって、量子もつれ状態の有無を確認することができる。AFMを用いてスピンの向きが検出できるかどうかを確認するために、2つの鉄原子の間に働く力を測定した。測定の積算回数を増やすことで、スピンの向きに依存する力の測定が行えることがわかった。しかしながら、磁気抵抗効果によるスピンの検出の感度と比較すると力によるスピンの検出の感度が不十分であることが判明した。そこで、現状の装置と比較すると力感度が100倍以上であるAFMを設計して、組み立てを終了したところである。室温における初期テストを行い、十分な性能を有していることを確認した。
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