2021 Fiscal Year Research-status Report
分子選択的捕捉・脱離部が集積化された堅牢な人工嗅覚センサ
Project/Area Number |
21K18868
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
柳田 剛 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (50420419)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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Keywords | センサ / ナノワイヤ / 酸化物 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、申請者独自の堅牢なナノワイヤ分子識別界面・ナノデバイス形成技術を発展させて、大気雰囲気・高温の過酷環境で長期間にわたって機能する堅牢な人工嗅覚センサを開発することである。2021年度、申請者はこの課題に対して3つのアプローチ(1. 堅牢かつ分子形状を認識する酸化物ナノワイヤ界面の創生、2. 堅牢な分子捕集デバイスによる分子選択的な分子補足・脱離、3. 捕集部から選択的に熱脱離した分子群の集積化センサ電気識別)で取り組んできた。以下に詳細を記す。 アプローチ1に関して、酸化亜鉛ナノワイヤ・酸化スズ薄膜に対象とする揮発性有機分子を固定化した状態で、厚さを精密制御して酸化チタン薄膜を原子層堆積法によって堆積させた。その後、高温でアニールして有機分子を酸化物表面から脱離させる事によって堅牢な分子鋳型を固体表面に作成した。ガスクロマトグラム質量分析の結果から、この堅牢な分子鋳型が分子形状のわずかな違いを識別して、対象の揮発性有機分子を選択的に吸着する事を発見した。 アプローチ2に関して、酸化亜鉛ナノワイヤを分子捕集部として利用する事で、同一の官能基を有し炭素鎖の長さだけが異なる揮発性有機分子の吸着量が温度に依存して系統的に変化する事をガスクロマトグラム質量分析測定によって見出した。また、赤外吸収分光と分子動力学計算から、この現象のメカニズムを解明するための手がかりとなるデータを得た。 アプローチ3に関して、チャネルのジオメトリと電極材料を工夫する事で、長期安定的に分子電気測定が可能な1024個の堅牢な酸化スズ薄膜分子センサーからなるワンチップセンサアレイを開発し、揮発性有機分子の空間濃度分布(拡散特性)の可視化に成功した。 今後、上記の技術を組み合わせて目的の達成を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、申請者独自の堅牢なナノワイヤ分子識別界面・ナノデバイス形成技術を発展させて、大気雰囲気・高温の過酷環境で長期間にわたって機能する堅牢な人工嗅覚センサを開発することである。2021年度、申請者はこの課題に対して3つのアプローチ(1. 堅牢かつ分子形状を認識する酸化物ナノワイヤ界面の創生、2. 堅牢な分子捕集デバイスによる分子選択的な分子補足・脱離、3. 捕集部から選択的に熱脱離した分子群の集積化センサ電気識別)で取り組んできた。以下に詳細を記す。 アプローチ1に関して、酸化亜鉛ナノワイヤ・酸化スズ薄膜に対象とする揮発性有機分子を固定化した状態で、厚さを精密制御して酸化チタン薄膜を原子層堆積法によって堆積させた。その後、高温でアニールして有機分子を酸化物表面から脱離させる事によって堅牢な分子鋳型を固体表面に作成した。ガスクロマトグラム質量分析の結果から、この堅牢な分子鋳型が分子形状のわずかな違いを識別して、対象の揮発性有機分子を選択的に吸着する事を発見した。 アプローチ2に関して、酸化亜鉛ナノワイヤを分子捕集部として利用する事で、同一の官能基を有し炭素鎖の長さだけが異なる揮発性有機分子の吸着量が温度に依存して系統的に変化する事をガスクロマトグラム質量分析測定によって見出した。また、赤外吸収分光と分子動力学計算から、この現象のメカニズムを解明するための手がかりとなるデータを得た。 アプローチ3に関して、チャネルのジオメトリと電極材料を工夫する事で、長期安定的に分子電気測定が可能な1024個の堅牢な酸化スズ薄膜分子センサーからなるワンチップセンサアレイを開発し、揮発性有機分子の空間濃度分布(拡散特性)の可視化に成功した。 このように、全てのアプローチにおいて順調に研究が進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
アプローチ1(堅牢かつ分子形状を認識する酸化物ナノワイヤ界面の創生)。基礎となるナノワイヤ・薄膜に使用する金属酸化物及び分子鋳型作成時に原子層堆積させる金属酸化物の種類を増やす事で、より効率的かつ選択的に分子を吸着可能な材料を探索する。また、対象となる揮発性有機分子に関しても、現在のケトン・アルデヒドだけでなく、アルコールやアミン、芳香族など多様な官能基を有した分子に拡張する。これらによって得られた莫大なデータを利用する事で、金属酸化物固体表面と有機分子間の吸脱着メカニズムを明らかにする。 アプローチ2(堅牢な分子捕集デバイスによる分子選択的な分子補足・脱離)。酸化亜鉛ナノワイヤ表面に原子層堆積によって、酸化スズや酸化チタン、酸化ジルコニウムなど様々な金属酸化物を堆積する事で分子吸着特性を変化させる。また、対象の揮発性有機分子を現在のカルボン酸からその他の官能基を有するものへと拡張する。 アプローチ3(捕集部から選択的に熱脱離した分子群の集積化センサ電気識別)。2021年度に開発したセンサアレイでは電気伝導特性と分子応答が同一の堅牢な1024個の酸化スズ薄膜分子センサーを集積化したが、本年度は1024のチャネルを区画化し、各区画に異なる金属粒子や金属酸化物極薄膜を修飾する事で、様々な分子応答性を付与する。 アプローチ1,2,3それぞれの発展と並行して、全ての技術を生かして本研究の目的である「大気雰囲気・高温の過酷環境で長期間にわたって機能する堅牢な人工嗅覚センサ」の開発を行う。これを達成するために、分子吸着脱離部と分子電気識別アレイセンサを縦に並べる。分子吸着脱離にはアプローチ1,2の技術を、分子電気識別にはアプローチ1,3の技術を利用する。
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Causes of Carryover |
物品費に関して、過去の研究と共通する物品が多く、実験の失敗も少なかったため、既に研究室に存在する物品で研究を十分に進める事ができた。そのため使用しなかった。旅費に関して、時世を考慮し実地での研究発表/議論を行う事を避けたため使用しなかった。人権費に関して、2022年度に一人を長時間雇用するために当初2021年度に使用予定であった費用を2022年度に充てた。 使用計画 2022年度の人権費として利用する。
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Research Products
(4 results)