2021 Fiscal Year Research-status Report
電子捕獲準位の誘電損失機構を活用したナノ薄膜の欠陥回復と信頼性向上に関する研究
Project/Area Number |
21K18875
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
江利口 浩二 京都大学, 工学研究科, 教授 (70419448)
|
Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2023-03-31
|
Keywords | 欠陥 / マイクロ波 / シリコン窒化膜 / 窒化ホウ素膜 / トンネルリーク電流 / 微分電気容量 |
Outline of Annual Research Achievements |
機能素子の信頼性などに直結する,材料中の想定外の分極を有する局所電子構造(電子捕獲型準位=ナノ欠陥構造)は工学的に重要な研究対象である.これら局所電子構造の動的挙動の解明は,超高信頼性化が要求される将来のデバイス開発における最重要課題でもある.本研究では,それら欠陥構造の特異な分極構造に着目した誘電損失機構を利用して,欠陥構造の回復を試みるものでもある.幅広い工学分野で注目されている窒化シリコン膜(SiN)や窒化ホウ素膜(BN)を対象とする. 今年度は,SiN膜,BN膜をシリコン基板上に作製し,独自のプラズマ照射技術でこれら薄膜表面数ナノnm領域に欠陥構造を局在化させ,プラズマ曝露前後,そしてマイクロ波照射前後での構造(ナノ欠陥構造)の動的振る舞いを詳細に解析した.具体的には, (1)SiN薄膜,BN薄膜を誘導結合型Ar,Heプラズマに曝露し,表面改質層を形成し,電子状態の変化を解析,そして (2)マイクロ波照射により,形成された表面欠陥層内の電気特性変動,すなわち局所欠陥構造の誘電損失機構を解析した. その結果,SiN薄膜では,プラズマ曝露ならびにマイクロ波照射によって,トンネルリーク電流ならびに微分電気容量特性が変動することがわかった.これは,プラズマ曝露によって形成された新たな局所電子構造型欠陥が,マイクロ波照射による誘電損失機構を経てその構造が変化したことを示唆している.一方で,BN薄膜においては,顕著な差が確認できなかった.それらの実験事実は,SiNネットワーク,BNネットワークの電子状態とその構造変化の特徴に起因するとも考えられ,今後詳細な解析・検討を進める.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究対象とするシリコン窒化膜,窒化ホウ素膜サンプル準備は順調に進んでいる.また既存のプラズマ照射装置による照射実験は計画通りに進んでいる.一方で,プラズマ照射により形成された欠陥の誘電損失機構を調査するためのマイクロ波照射装置については,その性能向上ならびに条件最適化が十分に進んでいない.特に,想定している装置改造(石英製基板ステージ)・最適化は,関係者との打ち合わせが十分にできず,若干遅れている.
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度は,SiN薄膜,BN薄膜の電子状態変化を,従来のトンネルリーク電流,微分電気容量解析に加えて,コンダクタンス法を中心とするインピーダンス解析を実施する.インピーダンス解析の有効性は別の研究活動から実証済である.欠陥構造の動的振る舞いの検出感度を向上させ,マイクロ波照射条件の最適化を検討する.また,これら電気特性解析に加えて,ナノスケールでの機械特性変動解析を組み合わせ,様々な視点から,局所欠陥構造の誘電損失機構の効果を検討する.
|
Causes of Carryover |
SiN薄膜,BN薄膜作製用基板の納期が遅れている.また,マイクロ波照射装置の性能改善のための部品(石英製基板フォルダーシステム,温度計測系改造など)の打ち合わせ・発注が遅れている.なお,基板は順次納品される予定であり,今年度のSiN薄膜,BN薄膜形成に支障はない.また,マイクロ波照射装置はじめ,実験に使用する真空部品や石英基板フォルダーについても,今年度中の改造,性能改善確認は計画通りに進んでいる.同時に,旅費についても,今年度中に,現時点での研究成果を含めた国際学会発表を計画している.
|
Research Products
(1 results)