2021 Fiscal Year Research-status Report
Revolution of graphite-intercalation-compound (GIC) research by highly controlled bilayer graphene
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21K18878
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
吾郷 浩樹 九州大学, グローバルイノベーションセンター, 教授 (10356355)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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Keywords | 二層グラフェン / インターカレーション / 二次元ナノ空間 / 黒鉛層間化合物 / CVD |
Outline of Annual Research Achievements |
黒鉛(グラファイト)に分子やイオンを挿入した黒鉛層間化合物(GIC)は、その挿入物質に依存して電子・光・磁気物性が大きく変化し、超伝導を含めた興味深い物性が多く観察されることから、特に1980年から1990年代にかけて非常に活発に研究が行われてきた。一方、近年、黒鉛を極限まで薄くしたグラフェンが、その特異的な構造と物性から大きな注目を集めている。我々は、エピタキシャルCVD法と名付けたサファイア上に堆積した金属薄膜を触媒としてグラフェンを合成するというオリジナルな手法を発展させてきた。これにより、二層グラフェンの選択成長もできるようになってきた。なお、二層グラフェンを均一にCVD成長する技術をもつのは国内では我々だけであると考えている。 本研究ではCVD法によって大面積で合成する二層グラフェンと、最新の電子顕微鏡を活用することで、黒鉛層間化合物の研究に革新をもたらすことを目的に研究を進めている。本年度、二層グラフェン中に金属塩化物をインターカレーションし、電子顕微鏡で観察することで、グラフェン層間に金属塩化物が複数の特異構造を形成することを世界で初めて明らかにした。また、インターカレーションによって、グラフェン層間のカップリングが極めて弱くなることも実験的に確認した。 さらに、積層構造(ツイスト角度)を制御した二層グラフェンを作り出し、ツイスト角度がインターカレーションに与える影響を系統的に調べた。その結果、金属塩化物のインターカレーションがツイスト角度に大きく依存することを明らかにした。またインターカレーションされる二層グラフェンの面積は、グラフェンの層間相互作用と密接に関連することも見出した。この結果を発展させて、光透過性を維持しながら二層グラフェンの電気伝導度を著しく向上させ、透明電極としての可能性を大きく広げることにも成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
CVD法によって二層グラフェンを合成するとともに、効率的にTEMグリッドに転写することができ、高度な電子顕微鏡で多くのサンプルを観察することができるようになった。これにより、二層グラフェンの作る二次元ナノ空間中でのみ生成する、非常に興味深い金属塩化物の超構造を発見することができた。また、複数の超構造は電子線によって構造変化することも分かった。さらに、分子のインターカレーションによって層間カップリングが大きく低減することも実験的に明らかにした。本研究の知見は、二次元ナノ空間での科学という新しい研究フィールドにつながるものである。 上記とともに単層グラフェンを積層した人工的な二層グラフェンを作製して、積層構造(ツイスト角度)を制御することで、ツイスト角度が金属塩化物のインターカレーションに及ぼす影響を詳細に検討した。その結果、ツイスト角度がインターカレーションの割合に非常に大きな影響を及ぼすことを見出すことに成功した。近年、魔法角で積層した二層グラフェンの超電導の発現など、ツイスト角度による二層グラフェンの電子物性の変調が大きな注目を集めているが、本研究はツイスト角度に依存した全く新しい現象を見出したことになる。また、この現象を活用して高い光透過率を維持したまま、50Ω/□を切る非常に低いシート抵抗の二層グラフェンの作製に成功し、グラフェンの透明電極応用に向けた新たな設計指針を提示することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も引き続き、二層グラフェンと電子顕微鏡を活用しながら、黒鉛層間化合物の科学を革新する研究成果を追求していく。これまで分からなかった微細構造に基づいた、インターカレーションとその挿入物質の構造の系統的な理解につなげていく。また、CVD合成した三層グラフェンなどを用いて、黒鉛層間化合物で見られる特徴的なステージング現象と関連した研究にも着手する。 さらには、アルカリ金属、アルカリ土類金属など、これまで行ってきた金属塩化物とは異なる物質のグラフェン中へのインターカレーションを試み、超伝導の発現、二層グラフェンならではの自由度を活かしたユニークな取り組みなど新たな研究を展開して、革新的な研究成果を得ることを目指していく。
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Causes of Carryover |
新型コロナの影響により、共同研究の打ち合わせのために準備していた出張ができなかったため次年度使用額が生じた。次年度は共同研究の打ち合わせや学会参加のため使用する計画である。
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Research Products
(21 results)