2023 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21K18883
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
山本 大輔 福岡大学, 理学部, 教授 (80377902)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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Keywords | 走査プローブ顕微鏡 / 原子間力顕微鏡 / カンチレバー / 構造物性 |
Outline of Annual Research Achievements |
原子間力顕微鏡カンチレバーの熱揺らぎに含まれる物理量を利用してナノ構造物性を可視化する技術の開発を行った。カンチレバーの先端に取り付けられた探針がナノメートル以下の距離まで試料表面に接近すると、カンチレバーの熱揺らぎの大きさが減衰する。同時に速度揺らぎも減衰するとともにカンチレバーにたわみが生じる。これらのパラメーターより熱力学関係式を用いてエントロピーカーブを生成した。探針を試料に接近させるときに試料を含む系全体の熱力学パラメーターが変化する。本方法ではカンチレバーがもつ物理量が検出される。得られた実験データを詳細に解析した結果、試料表面の物性のみならず、探針と試料との間に生じる相互作用エネルギーがカンチレバーのエントロピーカーブに大きく影響を及ぼすことがわかった。この相互作用は探針先端の状態に大きく依存し制御困難であるため、現状では高い再現性をもってエントロピーを含む熱力学パラメーターの再構成を達成することができなかった。一方、カンチレバーの速度揺らぎを用いた試料の測定では、種々の試料について、原子間力顕微鏡で得られる速度揺らぎ画像のコントラストを向上させることができた。この点では、カンチレバーの熱パラメーターの一部を用いた構造物性の可視化を達成することができた。解析により、速度揺らぎ像にコントラストが生じる機構は複数の要因があると推察された。さらに、熱揺らぎカーブ測定により雲母基板上の水和水を検出可能であることがわかった。同時に得られる揺らぎの大きさと速度揺らぎのふたつのカーブは、水和構造に対して異なる挙動を示した。これらの結果よりカンチレバーの熱揺らぎ測定は局所的な構造物性の差異を評価する強力なツールになり得ることを示すことができた。
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