2021 Fiscal Year Research-status Report
重い14族元素を含んだ炭素ナノ構造体のボトムアップ表面合成の実現
Project/Area Number |
21K18885
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
川井 茂樹 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 先端材料解析研究拠点, グループリーダー (30716395)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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Keywords | 有機ケイ素ナノ材料 / シラベンゼン / COF / グラフェンナノリボン / 走査型プローブ顕微鏡 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、金属表面上で有機化合物を前駆体とした1次元・2次元炭素薄膜のボトムアップ合成や、最先端の走査型プローブ顕微鏡を用いた構造や電子状態の解析に関する研究が急速に進展している。バンドギャップを制御できるグラフェンナノリボンなどは代表的な成功例である。本研究では、その構造の多様化を目指して、表面合成化学ではもとより、有機合成化学でも難題であったケイ素環式化合物とそれをリンカーとしたナノ構造膜の創生を目指して研究を遂行した。 これまでの研究に於いて、トリメチルシリル基[-Si(CH3)3]を導入した小分子を用いてホモカップリング(ACS Nano 2018, 12, 8791)やヘテロカップリング(Angew.Chem.Int.Ed.2021, 60, 19598)を実現してきた。本研究ではより多彩な有機ケイ素ナノ材料を目指して、Si原子を表面上で直接導入する合成法を開発する。 具体的には、臭素などのハロゲン原子を導入した小分子とシリコン原子を表面上に蒸着し、金属基板上での加熱による反応を開発した。これにより、1,4-ジシラベンゼン(C4Si2)を表面合成することに成功し、そのユニットを介して、1次元のグラフェンナノリボンと2次元の共有結合性有機構造体(COF)の合成に成功した。その構造や電気特性を極低温超高真空で動作する高分解能走査型プローブ顕微鏡で計測した。また、その実験結果を基に理論計算を行った。各反応過程における化学状態の変化は、放射光施設での分光計測により同定した。 この一連の研究結果を基に論文投稿を行い、現在査読中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
市販の化合物の再結晶化と既報の化合物の合成を協力研究者にして頂き、2種類の分子を用いて本研究課題に提案した内容を推進した。これらの分子には臭素原子が導入されており、通常の表面反応では脱臭素を伴うホモカップリングが進行する。しかしながら、C-C反応の選択性がなくランダムに小分子がカップリングするために、2次元膜を生成することは困難であることが知られている。一方で、あらかじめ金属表面にシリコン原子を蒸着することで、単純なC-C結合ではなく、C-Si-C結合ができることを見出した。これにより、1,4-ジシラベンゼン(C4Si2)の表面合成を実現した。表面で直接的にシリコン原子を分子膜に導入するこの反応には一般性があり、前駆体分子の臭素原子の位置を変えることで、ナノ空孔を有するCOF膜や1次元構造のグラフェンナノリボンなどを合成することに成功した。表面に蒸着するシリコン原子と分子の量を最適化することで、比較的大きな構造体を得ることができた。特にグラフェンナノリボン構造体の場合、更に高い温度で加熱することで、シリコン原子が一つ脱離し、含ケイ素5員環をリンカーとしたグラフェンナノリボン構造体へ変化させることにも成功した。これらの化合物は従来の有機合成・表面化学合成では実現することが出来なかった新奇化合物であり、挑戦的研究(萌芽)の趣旨に合った結果と考えられる。また、有機ケイ素化学の分野においても新しい潮流になるものであると期待している。本成果により、提案した研究課題の主目的は達成したと考えられる。既に、本研究に関する論文を投稿しており、当初の計画以上に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までの研究に於いて含ケイ素5員環と含ケイ素6員環を実現した。より反応性が高いと考えられる含ケイ素4員環や含ケイ素8員環の合成を検討する。これまでの研究では金の基板を用いて行っていたが、銀や銅などの他の基板についても検討する。更に、ゲルマニウム原子に関しても同様の合成手法で炭素薄膜のボトムアップ合成を検討する。
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Causes of Carryover |
COVID19の影響で予定していた国際学会への参加が取りやめになったため。また、予定していた装置のメンテナンスを延期し、それに伴う消耗品の消費が予定より少なくなったため。 次年度では、延期したメンテナンスを予定しており、多くの消耗品を使用する予定である。また、国際学会の参加も予定している。
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[Presentation] On-Surface Synthesis of Multi-Block Co-Oligomers by Defluorinative Coupling of CF3-Substituted Aromatic Systems2021
Author(s)
S. Kawai, A. Ishikawa, S. Ishida, T. Yamakado, Y. Ma, K. Sun, Y. Tateyama, R. Pawlak, E. Meyer, S. Saito, A. Osuka
Organizer
The 29th International Colloquium on Scanning Probe Microscopy
Int'l Joint Research
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