2022 Fiscal Year Annual Research Report
ファンデルワールスエピタキシー法による革新的熱電材料の開発
Project/Area Number |
21K18889
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
塩貝 純一 大阪大学, 大学院理学研究科, 准教授 (30734066)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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Keywords | 層状物質 / 熱電効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
2次元層状物質では、層面内の原子間が強固な共有結合で結合されているのに対して、層間は弱いファンデルワールス力で結合されている。このため、異なる2次元物質の薄膜を層の積層方向に堆積させる場合、隣接する物質からの格子歪の影響が弱いことから、目的の物性の創出に対して幅広い物質選択が可能である。本研究では、このような2次元層状物質の積層構造を真空蒸着法で作製し、物質固有の特性を活かした革新的な熱電素子の開発を行うことを目的とする。 二年次は、 (1)組成制御によるフェルミ準位制御技術の確立 (2)薄膜試料の熱電効果の評価 に取り組んだ。 (1)については、主に遷移金属モノカルコゲナイド物質に着目し、その薄膜の構造評価と電気磁気輸送特性を評価した。サファイア基板上でc軸配向に成長することを明らかにした。また、カチオン/アニオン比を制御することで、半導体金属転移を観測した。さらに、金属状態の組成をもつ試料の電気抵抗およびホール抵抗の磁場依存性と温度依存性から、カチオンサイトのスピン配列が非共面的な構造をもつことを示唆する結果が得られた。これらの結果から、本物質が非共面的なスピン構造を活用した磁気熱電効果を示すことが期待される。(2)については、温度可変抵抗装置に合致する熱電測定用ホルダーを自作し、さまざまな基板上に成膜した層状物質の熱電測定に取り組んだ。具体的には、トポロジカル絶縁体薄膜や遷移金属モノカルコゲナイド物質薄膜などである。薄膜の熱電効果を評価する場合、基板の熱伝導が問題となってくる。これまで、(1)の課題で使用していたサファイア基板は、熱伝導率が高い物質であり、熱電効果測定に必要な温度勾配を付けることが困難であった。このため、熱伝導率が比較的低いYSZ基板上で改めて成膜条件を整えた。その結果、層状の結晶構造やスピンに由来する熱電効果を示唆する結果が得られており、今後解釈を深めたい。
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