2022 Fiscal Year Annual Research Report
分子キラリティ導入によるスピン三重項超伝導体の創製
Project/Area Number |
21K18894
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
須田 理行 京都大学, 工学研究科, 准教授 (80585159)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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Keywords | キラリティ / 超伝導 / 非相反超伝導 / 遷移金属ダイカルコゲナイド / インタカレーション / スピン三重項超伝導 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、「超伝導体への分子キラリティ導入によるスピン三重項超伝導体の創製」を目的に、遷移金属ダイカルコゲナイドのファンデルワールス層間へのキラル分子挿入によって空間反転対称性の破れた超伝導体の創製によるスピン三重項超伝導体の創製を試みた。 本年度は、遷移金属ダイカルコゲナイドの一種であるMoTe2の層間にキラルイオン液体の電気化学的インターカレーションを行い、キラルイオン液体が層間に挿入されたキラルファンデルワールス超格子を創製した。創製したキラル超格子は低温で超伝導転移を示し、キラル超伝導体の創製に成功したことが確認された。 キラル分子導入による空間反転対称性の破れが超伝導状態における電子状態に及ぼす影響を調べるために、このバルクキラル超伝導体において非相反超伝導測定を行った。外部磁場を層状構造の面内に印加し、交流電流を用いたR2ω測定により、非相反超伝導状態の検出を行なった。試料が常伝導状態であるT = 4.0 Kでは非相反性は検出されないのに対し、試料が超伝導状態にあるT = 1.5 KにおいてはR2ωの磁場に対する反対称シグナルが観測され、非相超伝導が確認された。非相反超伝導の発現機構の1つとして、空間反転対称性の破れによるスピン三重項成分の混成が指摘されている。現時点ではスピン三重項成分の発現については明確な証拠は得られていないが、今後更なる検証を進める予定である。 本研究では、ファンデルワールス層状物質へのキラルイオン液体の電気化学的インタカレーションという新奇な手法によって、キラルな結晶構造を有する超伝導体の創製に成功するとともに、分子キラリティに由来する非相反超伝導特性を観測した。 本手法は、任意の電子物性(磁性、伝導性、超伝導性、発光特性、触媒能)を有するファンデルワールス層状物質への展開が可能であり、空間反転対称性の破れた凝縮系物質創製の“普遍的手法”となることが期待される。
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