2021 Fiscal Year Research-status Report
高感度非線形ラマン分光法による物理吸着水素分子の極低温量子ダイナミクスの直接観察
Project/Area Number |
21K18896
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Research Institution | Institute for Molecular Science |
Principal Investigator |
杉本 敏樹 分子科学研究所, 物質分子科学研究領域, 准教授 (00630782)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
國貞 雄治 北海道大学, 工学研究院, 助教 (00591075)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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Keywords | 等核二原子分子 / 物理吸着 / ダイナミクス / 固体表面 / 非線形分光法 |
Outline of Annual Research Achievements |
固体表面のin-situ観測に従来から広く用いられてきた赤外分光法では等核二原子分子である水素分子を多くの場合検出できず,また,NMRや中性子線散乱・自発ラマン分光では表面1分子層(数密度nmol/cm2程度)以下の微量の吸着水素分子の計測が困難である。一方,高分解能電子線エネルギー損失分光法やSTMによる非弾性トンネル分光法ではプローブの電子が衝突する際に電子スピンが水素分子の核スピン転換を誘起してしまうという問題点があり適用が限定的であった。 本研究では,水素分子の量子ダイナミクスの解明可能性を探索するべく、こうした既存の計測手法の限界を突破した非線形分光研究に挑戦している。具体的には、当グループの分光システムをベースとして、表面1分子層に感度がある非線形分光測定を行うための光学系の立ち上げを行った。スーパーコンティニュー光を用いたマルチプレックス方式、及び超短パルスレーザーを用いたインパルシブ励起方式での非線形分光の両方式を検討した。大気中の主成分となるガス分子や圧力を系統的に変化させたH2, D2ガス分子に対する振動回転線の測定を行い、同セットアップにて実施したこれらのガス分子種に対する自発ラマン測定と比較することで、非線形分光信号は自発ラマン散乱信号に比して10^5倍以上もの感度向上が実現している事を確かめることができた。また、薄膜系や表面吸着分子系に対する非線形分光測定にも成功し、非線形分光計測の新たな適用可能性を見出すことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度は、当グループのレーザー光源をベースとして、スーパーコンティニュー光や差周波発生光を用いたマルチプレックス方式、及びフェム秒超短パルスレーザーを用いたインパルシブ励起方式を採用した非線形分光システムの立ち上げを行った。気相ガス分子を対象とする実験により、構築した非線形分光系の計測感度が、通常の自発ラマン分光計測の感度よりも10^5倍以上優れていることを実証することにも成功した。また、光学配置や計測方法論の改良により、表面吸着分子層に対して高い感度を有する非線形分光にも成功するなど、既存の計測手法の限界を突破した非線形分光研究への挑戦を実施することができている。
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Strategy for Future Research Activity |
固体表面のin-situ観測に従来から広く用いられてきた赤外分光法では等核二原子分子である水素分子を多くの場合検出できず,また,NMRや中性子線散乱・自発ラマン分光では表面1分子層(数密度nmol/cm2程度)以下の微量の吸着水素分子の計測が困難である。一方,高分解能電子線エネルギー損失分光法やSTMによる非弾性トンネル分光法ではプローブの電子が衝突する際に電子スピンが水素分子の核スピン転換を誘起してしまうという問題点があり適用が限定的であった。 2022年度は、昨年度に構築が完了している分光システムを用いて、金属や絶縁体の表面における物理吸着分子のin-situ観察を実施する。
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Causes of Carryover |
コロナ禍により学会・研究会にオンラインで参加したため、旅費の出費が当初の想定よりも少なくなった。次年度は現地開催の会議が増加することが見込まれ、本予算は次年度の旅費に充てる計画である。
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Research Products
(7 results)