2021 Fiscal Year Research-status Report
Elucidation and control of formation mechanism for semiconductor crystals on the basis of transfer of electrons and ions performed by bacteria
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21K18911
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
富永 依里子 広島大学, 先進理工系科学研究科(先), 准教授 (40634936)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡村 好子 広島大学, 統合生命科学研究科(先), 教授 (80405513)
阪口 利文 県立広島大学, 生命環境学部, 教授 (10272999)
鈴木 道生 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 准教授 (10647655)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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Keywords | バイオミネラリゼーション / 細菌 / 結晶成長 / 化合物半導体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、生物が鉱物を作り出す反応であるバイオミネラリゼーションを用いた化合物半導体の結晶成長に関するもので、その機構の解明を最終目的としている。当該年度、研究代表者と分担者は、主に硫化鉛とGaAs系化合物の合成に取り組んだ。硫化鉛を合成する菌叢においては、継代日数を変化させて複数回継代を行うことで、菌叢を構成している菌の種類の分布を変化させることができ、それによって硫化鉛の薄膜化と球状化の形状の違いに変化が生じることを示唆する結果を得た。また、GaAs系化合物を回収・合成する菌においては、菌の増殖を確認し、現時点で断定するための測定が行えていないが、添加元素を回収していると考えられる結果を得た。しかし、透過型電子顕微鏡を用いた観察の結果、GaAs系の化合物が合成されているのではなく、Ga単体の結晶などになっていることが判明した。GaAs系化合物を細菌に合成させるための工夫が必要であることがわかった。
また、別の分担者においては、海洋生物由来の微生物であるShewanella sp. KND-1株を亜セレン酸ナトリウムと塩化鉛溶液を培養液に添加して、培養することで培養液中にセレンと鉛で構成されるアモルファス上の沈殿の形成を確認できた。構成比はほぼ1:1で、培養を長期化させることで結晶性のある沈殿の形成がみとめられた。更に、形成された沈殿物に対して加熱処理(200度~300度)を施したところ、沈殿物からのセレンの昇華と思われる処理物からのセレンの消失現象が確認できた。このことから、反って加熱処理を施すよりも常温下における培養時間の延長によってセレンの沈殿物への沈着と結晶化が促進されることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
硫化物、GaAs系、セレン系各化合物を合成する細菌ならびに細菌叢の培養や獲得を進めることができているため、初年度の目的は達成している。第二年度目にこれらの細菌の作用や分泌物などを一部だけでも明らかにしたいため、その解明に必要な細菌が複数揃ったことは研究が順調に進んでいると判断して良い。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度に得られた細菌群や細菌を用いて、合成物の周囲を覆っている有機物や物質の特定を一種類だけでも行う。これは、研究代表者と分担者が協力して行う。また、初年度に本研究を進める中で、細菌による物質合成の過程で生じた元素の価数の変化を放射光を用いて測定する技術について研究代表者が情報を得たため、申請当初の研究計画にはなかったが、価数の測定にも取り組むことを新たに推進方策として挙げる。これにより、最終目的である細菌が行う電子・イオンの授受による半導体結晶形成機構の解明と制御に繋げる。
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Causes of Carryover |
コロナ禍のため、当初計画していたほど研究グループ構成員の互いの所属機関を行き来することがなく、また、国内・国際両学会もオンライン開催が多かったため、出張費が当初予定より少なく済んだことによる。次年度にこの分を出張費や実験消耗品費等に使用することで実験の推進を高効率化することや研究発表実績の更なる高インパクト化と増強を検討する。
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