2021 Fiscal Year Research-status Report
Development of New Radical Reactions by Computational Chemistry and Their Realization by Synthetic Experiment
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21K18945
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
美多 剛 北海道大学, 化学反応創成研究拠点, 特任准教授 (00548183)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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Keywords | AFIR法 / 量子化学計算 / ラジカル / アミノ酸 / 逆合成 / 反応経路ネットワーク / 光電子移動触媒 / 電解反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
β-アミノ酸の一種であるβ-アラニンのα-アミノアルキルラジカルに対して、量子化学的な逆合成AFIR法を行ったところ、「アミジルラジカル」「エチレン」、および「CO2」に逆合成される経路の存在が示唆された。この知見を基に、アミジルラジカルをその前駆体から実験的に発生させ、エチレンおよびCO2雰囲気下で反応を実施したが、β-アラニンを得ることはできなかった。しかし、分子内にアミン部位とアルケンを併せ持つ基質を用いて反応を行うことで、分子内でラジカル環化した後にカルボキシル化して生じたβ-アミノ酸が高収率で得られることがわかった。その後、この環化カルボキシル化反応の反応機構解析を行い、詳細な反応経路を算出した。同時に、エチレンのラジカル二官能基化反応を計算主導にて行った。まず、様々なヘテロ原子ラジカル、および炭素ラジカルとエチレンとのラジカル反応の活性化障壁を算出した。活性化障壁の低かったイミジルラジカル、およびスルホニルラジカルを用いてラジカル反応を行ったところ、エチレンが二分子導入された化合物が選択的に得られることがわかった。最後にCO2を一電子還元することで生成するラジカルアニオン種の挙動を計算で求めることで、インドール、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、電子求引性基を導入したフランやチオフェンに対する脱芳香族化を伴うモノ、およびダブルカルボキシル化の開発に成功した。これまでにインドールのような安定なヘテロ芳香環に対して脱芳香化を伴いながらCO2を導入する反応に関しては報告例がないため、学術的にも非常に興味が持たれる。加えて、その応用研究にも取り組み、得られたモノ、およびジカルボキシル化体から生物活性化合物の部分骨格や重要中間体へ効率的に誘導することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
AFIR法を基盤とした反応経路自動経路を、β-アミノ酸の一種であるβ-アラニンに対してラジカル条件で実施したところ、「アミジルラジカル」「エチレン」「CO2」に逆合成されることがわかり、ここから実験的に基質をデザインすることでβ-アミノ酸の化学合成に成功した。これは世界初のCO2を一炭素資源としたβ-アミノ酸の触媒的な化学合成である。また、このエチレンに対して付加する可能性があるラジカル種を計算で求めることで、イミジルラジカル、およびスルホニルラジカルが活性化障壁低くエチレンに付加することが明らかになった。この結果を受けて、イミジルラジカル、およびスルホニルラジカルとエチレンとの反応を行ったところ、エチレンが二分子導入された化合物が得られることがわかった。この二分子導入される現象に関して計算科学を用いて解析して、二つ目のエチレンを違うアルケンに変更することにも成功した。続いて、CO2を一電子還元することによって生成することができるラジカルアニオンの挙動を計算して、これがインドールなどの安定なヘテロ芳香環に付加することを見出した。この現象を発展させることで、初のヘテロ芳香環のジカルボキシル化に成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度にAFIR法によって見出された、DPPE(1,2-ビスジフェニルホスフィノエタン)誘導体の合成法の検討を行う。DPPEをAFIR法により量子化学的に逆合成したところ2つのリンラジカルとエチレンに逆合成されることがわかった。この知見を基に合成化学実験を行ったところ、光電子移動触媒存在下、可視光を照射することでジホスフィンとエチレンからDPPEが合成できることがわかったので、令和4年度はそれを非対称DPPEの合成に応用し、基質展開を実施し、これまでに合成例のない様々な非対称DPPE誘導体の化学合成に繋げる。また、令和3年度にCO2のラジカルアニオンが安定なヘテロ芳香環であるインドール誘導体に付加することを見出し、電解条件下でそのラジカルアニオンを発生させたところ脱芳香族化を伴うカルボキシル化に成功した。そこで令和4年度はCO2のラジカルアニオンの挙動をAFIR法により網羅的に探索して新反応の開発に繋げる。
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Causes of Carryover |
令和3年度は、コロナ禍で全ての学会がオンラインとなり、それによる当初の旅費等の出費計画が変更になり、かつ他の予算も同様に余剰が生じたため。使用計画としては、高価な光発生装置や電解装置、およびその電極の購入に充てる。
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