2021 Fiscal Year Research-status Report
Design and synthesis of supramolecular organic semiconductor materials that exhibit high charge transport characteristics
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21K18948
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
寺尾 潤 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (00322173)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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Keywords | カテナン / 電子伝達系 / 機能性共役分子 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、自己組織化を利用して系統的に環サイズを拡大した大員環合成を試みた。自己組織化配位子として、Cu(I)イオンによりらせん構造を形成するビピリジンを選択し三種類の分子Bpyn (n = 1, 2, 3)を合成した。各分子に対してCu(I)イオンを添加してらせん構造を形成させ、閉環メタセシス反応、水添反応、脱金属反応を続けて行うことで複数のビピリジン骨格を有する大員環を合成した。大員環の収率は、macrocycle1が21%、macrocycle2が43%、macrocycle3が40%となった。環サイズの大きいmacrocycle2とmacrocycle3による収率の方が高く、macrocycle2とmacrocycle3の収率も概ね変わらないことが確認された。この結果から自己組織化を利用した本戦略の有用性が示唆された。次に、分子間組織化配位子としてフェナントロリン、分子内自己組織化配位子としてターピリジン、閉環メタセシス反応点として末端アルケンを有するPT1を設計・合成した。PT1を構成するターピリジンは、Fe(II)イオンによりらせん構造を形成することが知られており、フェナントロリン- Cu(I)錯体と配位子が交差しない分子内自己組織化配位子として採用した。実際に、Fe(II)イオンやCu(I)イオンを用いて、下記の手順でPT1からカテナンの合成を試みた。始めに、PT1に対して、Fe(II)イオン、Cu(I)イオンを順に添加することで、化合物1が生成した。さらにPT1とFe(II)イオンを添加することで化合物2が生成した。各錯体の生成は、1H NMRとESI-TOF-MSで確認した。続いて、2に対して閉環オレフィンメタセシス反応を行った。反応後の分析SECスペクトルからモノマーの環より分子サイズの大きいピークが確認され、カテナン構造3の生成が確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、複数の配位子と金属イオンのらせん構造形成に基づく自己組織化を経て、大員環インターロック分子の合成を実現する戦略を考案した。 始めに金属イオンによってらせん構造を形成するビピリジン分子を用いた大員環合成に着手した。この検討の結果から本戦略の有用性が示唆された。 本戦略を実証するために、環拡大型[2]カテナンの合成を試みた。本戦略では、分子間集合のためのフェナントロリン部位と分子内集合のためのビピリジンまたはターピリジン部位をそれぞれ有するPB1とPT1を設計、合成した。 PB1は、Cu(I)イオンとフェナントロリン部位およびビピリジン部位との錯形成により、カテナン前駆体を形成すると予想された。しかし、PB1からのカテナンの合成は、ビピリジン部位とフェナントロリン部位同士でCu(I)錯体が形成されてしまったため失敗した。 そこで、ビピリジン部位をターピリジンへと変更したPT1 を用いて分子間錯形成と分子内環形成を段階的に行うことで、大員環を有するカテナンを合成することに成功していることから、本研究は概ね順調に進展しているとした。
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Strategy for Future Research Activity |
予備検討として、分子間集合配位子と分子内自己組織化配位子の適切な組み合わせの確認を行ったところ。フェナントロリンとビピリジンの組み合わせのような二種類の配位子が同じ金属イオンと錯体を形成するものは選択的に錯体を形成することが困難であることが確認された。そこで配位子の組み合わせとして異なる二種類の金属イオンと錯形成する必要性が示唆されたため、分子間集合配位子としてのフェナントロリンの部分骨格と分子内自己組織化配位子としてのターピリジンが一つもしくは二つ連結した部分骨格の混合物に対して、Cu(I)イオンとFe(II)イオンを添加することでそれぞれの錯体を選択的に形成可能な反応条件を探索した。その結果ターピリジンの数ごとの最適な反応条件を見出した。また、フェナントロリンの配位能はビピリジンと類似しているため、分子間組織化配位子と分子内自己組織化配位子としてフェナントロリンとターピリジンもしくはターピリジンとビピリジンの組み合わせが有用であることが示唆された。そこで今後は、分子間組織化配位子としてフェナントロリン、分子内自己組織化配位子としてターピリジン、閉環メタセシス反応点として末端アルケンを有するPT1を設計し、分子間組織化配位子としてターピリジンではなく、フェナントロリンを選択する。その理由は、合成の容易さと、フェナントロリン-Cu(I)錯体を利用した方がカテナン前駆体の形成効率が高いためである。一方で、配位数が6の金属イオンについては、Fe(II)イオンを選択する。その理由としてはターピリジン-Fe(II)錯体は室温では比較的解離しにくいが、高温では容易に解離することから、加熱条件下で熱力学的に安定な錯体を選択的に得られると期待できるためである。
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Causes of Carryover |
コロナ禍で研究の進捗に遅れが若干出ているため。
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Research Products
(5 results)