2021 Fiscal Year Research-status Report
メソリティック開裂を起点とするラジカルの触媒的立体制御
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21K18957
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
大井 貴史 名古屋大学, 工学研究科(WPI), 教授 (80271708)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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Keywords | ラジカルイオン / ラジカル / 触媒的不斉合成 / 分子認識 / 分子触媒 |
Outline of Annual Research Achievements |
イオン反応の長足の進歩に対して、ラジカル触媒反応は未だ発展途上にある。特に、立体化学の制御を要する不斉ラジカル触媒反応は、ごく限られた例が報告されているのみであり、ラジカルそのものの触媒的な立体化学制御の実現は困難な課題として残されている。本計画の今年度の研究では、ラジカルイオンがイオンと炭素ラジカルに解離するメソリティック開裂の可逆性に焦点を当て、ラジカルイオンとイオン+炭素ラジカル間の平衡から相互作用の存在を見出すことで、ラジカルの反応を制御するための新しい方法論の開拓に着手した。具体的にはα-ブロモプロピオン酸エステルあるいはその類縁体と電子豊富オレフィンとのカップリング反応をモデルとして、本研究で想定したメソリティック開裂を促進・制御する触媒システムの効果を検証した。このモデル反応は、光レドックス触媒機能を有するイリジウム錯体単独でも低収率ながら反応が進行し、目的のカップリング生成物を与えるが、高いアニオン捕捉能を有する有機分子触媒を共存させると著しく反応速度が上昇し、高収率で生成物が得られることを見出した。この加速効果は、中間体として生じるラジカルアニオンのメソリティック開裂を、有機分子触媒が促進しているためであると現時点では想定しているが、反応機構・触媒作用機序の解明を進める必要がある。また、著しい反応加速効果が確認できているのに対して、立体選択性の制御については未だ不十分なレベルにある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上項記載の通り、α-ブロモプロピオン酸エステルあるいはその類縁体と電子豊富オレフィンとのラジカルカップリング反応が特定の有機分子触媒存在下で著しく加速することを見い出しており、本研究計画で描いた分子触媒による反応制御の第一段階を達成しつつあると考えられる。残る立体化学制御がより挑戦的な課題であるが、代表者らがすでに開発済みのキラル有機分子触媒を中心に検証を重ねることで、制御を実現できる可能性が十分に高いと期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、α-ブロモプロピオン酸エステルあるいはその類縁体と電子豊富オレフィンとのラジカルカップリング反応をモデルに、立体選択性の制御を目指す。キラル有機分子触媒とラジカル中間体との相互作用をより効果的にするため、多点認識の考えを取り入れ、触媒とブロモプロピオン酸エステル類縁体の構造を修飾・精査し、立体選択性の向上に有効な分子構造を見定めていく。また、理論計算も駆使して反応機構を検証することで、炭素ラジカルの付加反応の立体制御を実現する。
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Causes of Carryover |
コロナ禍の影響で計画通りの納品・入手が困難となった輸入試薬の購入費を次年度使用額とした。現在は、入手可能な状況となったため、22年度に合わせて執行する。
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