2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
21K18976
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
河野 正規 東京工業大学, 理学院, 教授 (30247217)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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Keywords | MOF / 磁場 / 配向制御 / 構造解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
磁場・電場による小分子の配向制御は熱エネルギーに打ち勝てないために極めて難しいが、分子間相互作用により集合体を形成する特異な配位子と金属イオンを組み合わせることにより自己集合の過程を磁場・電場により制御し初期段階で生成する微小な核の配向を制御することで、通常結晶成長が難しい準安定な異方的細孔性ネットワーク錯体(MOF)を創製することを目的とする。例えば、分子間相互作用により集合体を形成する配位子と比較的磁気的異方性が大きな金属イオンを組み合わせることにより自己集合の過程を磁場により制御することを検討する。さらに、様々な金属イオンと組み合わせることにより電場を利用することによって異方的なMOFの構築を検討する。タンパク質や有機物などの反磁性体の場合、粒子の磁気的異方性は、「分子そのものの構造」や「分子の集合体(結晶・繊維など)としての構造」の異方性に基づくものと、粒子の「形状」の異方性に基づくものに分類される。ベンゼンのような芳香環は、コイルのように振る舞い、磁場をかけることにより誘導電流が発生し、磁場を打ち消しあう方向に磁化しようとする。結果的に芳香環平面はエネルギー的に一番安定な状態、つまり磁場をかけた方向に対して平行に配向しようとする。ただし、今回の結晶化ターゲットであるMOFの配位子のような小分子1分子では熱エネルギーに打ち勝つことができないため、まず集合体を形成する必要がある。今回分子間相互作用により集合体を形成するカルボン酸基を有する配位子を新規に合成し様々な金属イオンと組み合わせることにより自己集合の過程を磁場により制御することを検討した。条件検討の段階で新規MOFの合成に成功しているが、現在のところ室温で錯形成自体を制御することが難しい状況であるため磁場の影響を評価できる状況に至っていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今回複数の配位部位や大きな芳香環を含み、π-π相互作用や水素結合部位など多点相互作用部位を有する新たなカルボン酸を有する新規配位子を合成し、安定なMOFの合成を目指した。そのため、金属コネクターとしてジルコニウムイオンなど比較的ハードな金属イオンを用いて様々な条件下で新規MOFの合成を検討した。まずは磁場なしの条件でネットワーク構造を構築するために室温から80℃の温度範囲で条件検討を行ったところ80℃付近で単結晶が得られ新規MOFの合成に成功した。しかしながら、様々な条件検討にもかかわらず室温付近では単結晶を得ることに成功していない。ゲル状になったり、微粉末としてすぐに沈殿してしまったり、固体が得られず配位子交換反応が進行していないなどの結果が得られた。80℃では無限に結合がつながったネットワーク構造を得ていることからMOFの形成のためにはカルボン酸配位子の場合どうしても配位交換のために活性化エネルギーが必要であり、室温で微結晶が得られる場合は結晶成長のためにモジュレーターを用いて配位子交換速度を遅らせる必要がある。加熱状態では磁場下での分子の配向制御は難しいために、磁場下での検討は現在のところ当初の予定より進捗が遅れていると言える。しかしながら、熱的に安定な新規MOFの合成に成功し、かつ上手くいかない理由が明確に分かってきたので今後の方針が定まった。
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Strategy for Future Research Activity |
加熱条件下でのネットワーク構造の形成に成功しても磁場の影響を評価することが困難であることから室温でネットワーク構造を形成するためにまずは原点に立ち戻り既存の複数の相互作用部位を有するピリジン環を配位部位とする配位子を用い、溶液構造での知見がすでにあるカドミウムイオンとの錯形成反応を利用し、磁場と結晶構造との相関を明らかにする。配位子濃度と磁場化のどの範囲にどのような結晶が形成されるのかマッピングを行い、磁場と構造形成の相関を明らかにする。まずはすでに論文で報告した合成条件で磁場の影響により結晶成長の様子・結晶形・結晶構造の違いを注意深く検討する。また、最近の酸塩基の共存状態で新規ネットワーク構造の形成に成功していることから、昨年度合成したカルボン酸配位子とピリジン配位子の共存状態での錯生成反応も検討する。磁場の影響が確認され次第、10T以上の磁場をかけられる研究グループや共同施設を利用して強磁場下での研究を行う予定である。
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Causes of Carryover |
当初出張予定であった学会が急遽オンラインに変わったため
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