2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
21K18981
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
笠松 良崇 大阪大学, 大学院理学研究科, 教授 (70435593)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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Keywords | アスタチン / ヨウ素 / ハロゲン |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度に実施した安定なヨウ素を用いた基礎実験を引き続き行った。溶液濃度を変更した際の沈殿の様子をSEMで観測し、EDXによって元素分析などを行うことはできたが、沈殿の収率を精度よく求めることは引き続き困難であった。そのため、放射性のヨウ素、I-131(半減期約8日)を購入し、収率を求める実験を行った。購入後すぐに精製し、様々に条件を変更して水酸化物沈殿や水酸化サマリウム共沈を作成する操作を行い、吸引ろ過した試料をガンマ線測定することでその収率を求めた。結果として、精製後すぐに実施した実験では、過去のマルチトレーサーを用いて行った実験の結果に近いような収率を観測することができたが、その後の実験ではすべての条件下で収率が0%になった。放射性ハロゲンの化学挙動には経過時間依存性がある可能性が示された可能性が考えられ、当初の計画に加えて新しい実験系を考案している。 アスタチンのウランとの結合性に関する研究も基礎実験を行っている。 量子化学計算の環境が整ったため、計算化学からのアプローチも開始した。まずは計算の妥当性の検証を行うために分光データのある三ハロゲン化物イオンの計算をハロゲン元素を対象として行った。さらに、ヨウ素やアスタチンの計算には相対論計算が必要であるため、相対論計算にも着手した。結果として、実験データを再現するような計算手法、関数の選択が進んでおり、今後アスタチンの計算にも取り組んでいく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
放射性ヨウ素の実験を実現することができ、様々に条件を変えて沈殿収率、共沈収率を求めることができた。予想外の結果も観測されたが、化学的性質を調べる上では非常に興味深い挙動の観測ともいえる。今後の研究の展開に向けて順調に実験が進んでいると判断している。 計算化学も適切な関数や条件を見つけることができており、相対論を加味した計算にも至っており、こちらも進捗状況は順調といえる。
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Strategy for Future Research Activity |
放射性ヨウ素を用いた基礎実験やアスタチンの実験に向けた準備を進める予定である。キャリアの選定なども含めて今後さらに広く可能性を探っていきたいと考えている。どのような結果が得られるかは予測できないが、得られた結果に対して精度の良い計算を行える環境が整っている。計算化学の助力を得ることで、相対論効果によるアスタチンの特異な性質やその原因となる電子状態などの考察を進めていきたいと考えている。アスタチンの計算による予測に関する文献は多くないため、計算による成果だけでも論文の執筆を考えている。
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Causes of Carryover |
研究協力者である学生の基礎実験の一部を次年度に繰り越したため予算を少し次年度に繰り越すことになった。特にトラブルなどが起きたわけではなく、計算と実験のバランスを取る中での判断であり、研究の進捗に特に支障は生じない。繰り越した予算は予定通りに基礎実験を実施する際に実験器具の購入などに使用する予定である。
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