2022 Fiscal Year Research-status Report
深部がん治療を志向する抗体-近赤外光色素複合体の開発
Project/Area Number |
21K18984
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
古田 弘幸 立命館大学, 総合科学技術研究機構, 教授 (40244157)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石田 真敏 東京都立大学, 理学研究科, 准教授 (60706951)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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Keywords | 抗体 / ポルフィリン / ヘキサフィリン / 近赤外光 / 光アンケージ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、深部固形がんの治療において非侵襲的にアプローチ法として、近赤外光免疫治療法(NIR-PIT)に着目した光感受性増感薬剤の開発を目的としている。特に本手法の鍵となるモノクロナール抗体色素複合薬剤の開発において、光増感剤の光透過性の改善を指向して、細胞内光散乱が抑えられる波長1000 nm以上の第二近赤外(Second Near-infrared:NIR-II)光に応答する色素の開発を目指している。 令和4年度は、独自開発の近赤外吸収色素であるN-混乱ヘキサフィリンの長軸方向にエチニルアリール基を導入し、長波長吸収帯の伸長及び吸収強度の増強を試みた。末端アリール基をフェノール誘導体とすることで、フェノラートアニオンやフェノキシラジカル形成による電子状態の変化を外部刺激によって引き起こすことも期待した。実際、フッ化物アニオンの添加により、1100 nm付近の吸収帯がフリーベース体では1400 nm、銅錯体では1600 nm付近までシフトすることが観測され、脱プロトン化によるジアニオンの生成が示唆された。1HNMR, ESR, DFT計算などによる解析の結果、ジラジカル構造の寄与が判明した。また、第二近赤外領域での熱変換挙動について検討したところ、高い変換効果が観測されたが、フリーベース体については光照射後に分解が確認され、光安定性のためには金属錯化が必要であることが判明した。 一方、第二近赤外領域に吸収帯を持つ、N-混乱ポルフィリンの三重縮環二量体の合成にも成功した。2箇所の"NNNC"コア利用し、Ni(II)及びAg(III)錯化により、芳香族性が全く異なる2種の錯体が生成した。これらの錯体は酸化還元により芳香族性スイッチングが可能なことが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、第二近赤外光を活用する特異な光反応性色素の創製およびモノクローナル抗体との複合化を目指しており、初年度において、研究の基盤化合物となるシリコンヘキサフィリン化合物、二年度はエチニルアリール誘導体の合成、さらに、混乱型三重縮環ポルフィリン二量体の合成にも成功し、NIR-II光吸収環状共役色素の開発は当初の計画以上に進展している。ヘキサフィリン色素については、水溶性ナノ粒子中での光安定性や光音響効果等の重要な知見はすでに得られており、これから最終目的物であるモノクロナール抗体部位とのコンジュゲート作製に向けて、当初計画した研究展開が期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、ヘキサフィリン誘導体についてはモノクローナル抗体との複合化に向けて合成アプローチの開発を目指す。また、別途合成した縮環ポルフィリン二量体については、水溶性置換基の導入法を検討し、新たな候補色素の設計指針の確立を目指す。これらの色素複合体の光応答性を探索することで、目的としているがん細胞の近赤外光免疫治療へとつながることが期待される。
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Causes of Carryover |
九州大学定年退職により立命館大学に研究環境を移したが、研究場所を提供してくれた前田大光教授(応用化学)の厚意により、当初予定していた研究器具などの準備に要する経費が節約できた。次年度は、抗体と赤外色素との連結を計画しており、予算はモノクロナール抗体の購入、作製、学会発表のための旅費等に充てる予定である。
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