2021 Fiscal Year Research-status Report
高機能化液化色素ナノ油滴に基づく超高感度1ステップ診断デバイスの新原理創発
Project/Area Number |
21K18986
|
Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
久本 秀明 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (00286642)
|
Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2023-03-31
|
Keywords | イオン液体 / 色素液体 / アルカリフォスファターゼ / フェルスター共鳴エネルギー移動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本提案では近年我々が見出した油水界面酵素反応と高機能化色素液体ナノ油滴で、超高感度1ステップタンパク検出の新原理に直結する酵素検出用新規超高感度変色原理開拓を目的とする。 今年度は当初予定のフルオレセイン誘導体を含むいくつかの色素分子を合成し、酵素基質となる疎水性リン酸誘導体を組み合わせた色素液体ナノ油滴を作製してアルカリフォスファターゼ(ALP)応答の評価までを試みた。ここではアルキルリン酸を疎水性イオン液体カチオンであるテトラアルキルホスホニウムカチオンとのイオン対とした液体を合成し、ここに脱プロトンでアニオンとなる中性色素分子を混合してナノ油滴を調製した。その結果、中性pHの緩衝液中でナノ油滴に含まれる色素分子の脱プロトンが一部進行し、かなり大きなバックグラウンド信号が発生することがわかった。そこで色素分子種をいくつか検討することとした。アニオン性ではなく、カチオン性のメロシアニン色素およびフルオレセイン誘導体同様にアニオン性であるが、pKaの比較的大きなクマリン色素を検討した結果、メロシアニン色素では同様にバックグラウンドが大きくなったのに対し、クマリン色素の場合にはバックグラウンドが多少抑制されることがわかった。また、この時にALP溶液と接触させると蛍光強度が大きくなり、本提案で提案した油水界面酵素反応・電荷バランス変色という新原理を検証することに初めて成功した。 現在のところ、得られる蛍光強度変化は期待したほど大きくなかったため、ナノ油滴の組成の調整でさらなる性能の向上を図る。なお、クマリン色素を用いたコントロール実験で作製したナノ油滴は一部別テーマの実験での有益なデータとなり、その成果は論文として発表された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初予定していたドナー蛍光色素分子、アクセプター蛍光色素分子の合成は予定通り実施し、合成することができた。まず最初はフェルスター共鳴エネルギー移動ではなく、アクセプター分子のみを用いて予備検討を開始したところ、上記のようにバックグラウンド信号が予想以上に大きいことがわかり、いくつかの色素分子を検討した結果、酵素反応に伴って変色する原理検証自体は達成することができた。しかしながら得られた信号強度は期待していたほど大きくなかった。この原因には用いる色素分子や油滴サイズ、油滴内イオン対や油水界面に存在する色素分子の存在形態などが関与していると考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度は上記の課題を整理し、それらの原因を追究する実験を試みる。粒径サイズについてはナノ油滴作製時の攪拌条件を検討し、異なるサイズ分布のナノ油滴を調製する。また、本研究のコンセプトである「油水界面酵素反応に伴って誘起される油滴内電荷変化」で変色すると考えられる変色系として、極性変化に伴う変色の利用を検討する。プロトン脱着型変色の場合には色素のpKaに依存したバックグラウンド信号の増加の影響があることが初年度の検討で明らかになったため、pHに依存しない変色の期待できる分子を検討する。具体的にカチオン性のアクリジン系色素を疎水化した分子を合成し、カウンターアニオンとのイオン対を形成させて用いる。
|
Causes of Carryover |
残額が発生した要因は、当初予定していた参加学会がコロナ対応のためにオンラインとなってしまったため、旅費の一部を支出できなかったことおよび、進捗状況にて報告したように、研究の進捗が当初予定よりも少し遅れたために、初年度に消耗品として使用予定であった高額試薬の購入ができなかったことにある。 2年度には初年度の遅れを取り戻し、予定通り進めるため、初年度使用予定であった残額は2年度目に当初目的通り、高額消耗品として使用する予定である。
|