2021 Fiscal Year Research-status Report
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21K18991
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
小門 憲太 北海道大学, 電子科学研究所, 准教授 (40600226)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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Keywords | 筋肉 / 刺激応答性 / 高分子ゲル / 可逆性 / 酸化還元 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では筋肉のように化学力学変換を可能とするソフトマテリアルを創り出すことを目的とする。そのために、"可変長高分子セグメント"という概念を用いて、刺激に応答して膨潤相から膨潤相への体積変化だけを示す刺激応答性ゲルを創り出し、さらに自己組織化を用いて異方性を導入し、人工的に筋肉様ソフトマテリアルを創り出すことを目的としている。前年度は① "可変長高分子セグメント"の概念確立と刺激応答性ゲルの作製についての検討を行った。"可変長高分子セグメント"とは外部からの化学物質などの刺激に応答して切断・結合を繰り返す短鎖と、刺激に不活性な長鎖を組み合わせた高分子セグメントである。刺激に不活性な長鎖にはポリエチレングリコール鎖(PEG)を用い、刺激に活性のある短鎖にはジスルフィド結合を用い、二官能性の環状モノマーを合成した。これをクリック反応による重付加を用いて線状高分子を作製したところ、得られた高分子は外部からの試薬添加による化学的酸化還元に伴って分子量が減少・増大することがサイズ排除クロマトグラフィによって明らかになり、繰り返しの刺激によっても可逆的に応答することも分かった。重付加でモノマー分率が大きくなることが鍵であり、付加重合で数%だけ刺激応答性モノマーを入れても変化が小さすぎて観察できないことが明らかになった。ジスルフィド結合がチオールへと変化していることはエルマン試薬によって確認した。つぎに、架橋剤を混合することでゲルを作製した所、酸化還元反応に伴ってゲルの大きさが2倍程度伸縮することが明らかになった。この2状態はどちらも膨潤状態であり、膨潤状態と収縮状態ではない。どちらの状態もゲル中には溶媒がふんだんに入っているものの架橋密度の増減に伴っての体積変化が起こっているということになる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画で提案したような長鎖と短鎖の組み合わさったモノマーは作ることができた。化学的な酸化還元反応に応答して、還元すると短鎖側が開裂しモノマー部位が伸びた状態になり、再酸化すると短鎖側が再結合してモノマー部位が縮んだ状態になるということも分光的に確認できた。逐次重合を用いることでモノマー分率が大きくなり、酸化還元に伴う分子量の変化を増幅することができた。この重合系に架橋剤を導入することでゲルを作製することができ、得られたゲルは試薬添加による酸化還元によって大きな体積変化を示すことができた。この体積変化の始状態と終状態はどちらも膨潤状態である。これは、ゲル状態とゾル状態を行き来する刺激応答性ゲルとは全く異なることはもちろんであるが、膨潤状態と収縮状態を示す刺激応答性ゲルとも異なる。滑り運動による架橋点間距離の変化で体積変化を示す筋肉と非常に似ているものを創り出せたと見ることができる。当初の計画ではこれらのゲルを解析し、異方性を導入することまでを計画していたが、よりクリーンな反応系の利用を指向して、当初計画にはなかった電極反応の利用の方向へのシフトも考えている。このような研究計画の広がりが得られたのも、まずは計画していた分子構造のモノマーが得られ、それが高分子化後に望みの特性をある程度示したからである。これらの結果から本研究はおおむね順調に進展していると見なすことができる。
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Strategy for Future Research Activity |
下記の3点について重点的に検討を進める予定である。①ゲルの特性の詳細な解析:得られたゲルを良溶媒中で膨潤させたうえで引張試験機などを用いて外部刺激印加前後での力学特性を詳細に検討するとともに、外部刺激印加による仕事量の測定も行う。また、外部刺激に勾配(濃度勾配など)を与えることでゲルの走性の発現にも挑戦する。②異方性の導入による筋肉様ソフトマテリアルの実現:上記項目①で筋肉様ソフトマテリアルの素材が得られるので、ここに異方性を導入し、一軸方向の収縮が可能かという検証を行う。異方性を導入する手法としては液晶や結晶の自己組織化を用いる。液晶を用いる系ではずり応力や一軸配向基板を用いてモノマーを予め配向させ、モノマーが配向した状態で重合を行うことで配向ゲルを作製する。結晶を用いる系では多孔性結晶である金属有機構造体(MOF)の有機配位子に重合性の官能基を導入し、ゲスト分子として可変長モノマーを導入して重合することでゲルを作製することを計画している。③電気化学との融合:得られた刺激応答性ゲルの体積変化を現状では外部添加の試薬で引き起こしているが、原理的には電極反応でも有機可能であると考えられ、むしろ過度な反応が押さえられるという点ではクリーンであると考えられる。そこでITO基板上にゲルを作成して、電圧印加によるゲルの体積変化の誘起を行いたいと考えている。いわゆるソフトアクチュエータのような往復運動とは全く異なる伸縮運動の誘起が期待できる。
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Causes of Carryover |
所属機関の異動が2022年4月に起こることが2021年度中の早い段階で明らかになり、異動後の方がさまざまな設備備品や消耗品類が必要となることが予見されたので、2021年度は既存の設備備品や消耗品類を利用することで徹底的に節約に努めた。使用計画としては2022年度の早い段階で不足している消耗品類の購入に充当しようと考えている。
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Research Products
(3 results)
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[Journal Article] 1,2-Disubstituted-1,2-dihydro-1,2,4,5-tetrazine-3,6-dione as a Dynamic Covalent Bonding Unit at Room Temperature2022
Author(s)
Kawai, Kentaro; Ikeda, Kazuki; Sato, Akane; Kabasawa, Akira; Kojima, Masahiro ; Kokado, Kenta ; Kakugo, Akira ; Sada, Kazuki ; Yoshino, Tatsuhiko ; Matsunaga, Shigeki
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Journal Title
Journal of the American Chemical Society
Volume: 144
Pages: 1370-1379
DOI
Peer Reviewed
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