2021 Fiscal Year Research-status Report
PMMA分子平滑基板上に積層したPMMA孤立鎖の高温AFM観察による表面特性解明
Project/Area Number |
21K18993
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
熊木 治郎 山形大学, 大学院有機材料システム研究科, 教授 (00500290)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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Keywords | 分子平滑基板 / 熱ナノインプリント / Langmuir-Blodgett film / 表面ガラス転移温度 / 原子間力顕微鏡(AFM) |
Outline of Annual Research Achievements |
ポリメチルメタクリレート(PMMA)板(厚み2mm)をサファイア原子ステップ基板(ステップ高さ0.21nm)をモールドとして用いて熱プレスすることにより、PMMA分子ステップ基板が得られ、その分子ステップとその上にLangmuir-Blodgett法で積層したPMMA孤立鎖が室温で長時間安定に存在することが原子間力顕微鏡(AFM)観察で明らかになり、既に報告している。 本年度は、PMMA分子ステップ基板、およびその上にPMMA孤立鎖を積層したサンプルを高温AFMを用いてin situ観察し、その耐熱性を評価した。観察の結果、PMMA分子ステップ、およびPMMA孤立鎖ともにPMMAのバルクガラス転移温度(Tg)近傍まで安定に観察され、バルクTg近傍で、いずれも溶融することが確認された。これは、高分子表面ではTgが数十度低下しているという従来の常識を覆す結果である。 さらに、サファイア原子ステップ基板ではなく、汎用で入手可能な原子平滑基板であるマイカを用いても、PMMA分子平滑基板ができることを見出し、その上に積層したPMMA孤立鎖もバルクTg近傍まで安定に存在することを確認した。さらに、高温で実時間AFM観察を行い、表面構造を動的に評価したところ、基板面およびその上に積層したPMMA孤立鎖ともに、バルクTg近傍で運動を開始することが明らかになった。PMMA表面のTgはバルクに比べて大幅に低下していないと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
サファイア原子ステップ基板だけでなく、マイカをモールドとして用いて分子平滑基板が作成できることを見出したこと。両モールドで作成したPMMA分子平滑基板、およびその上に積層したPMMA孤立鎖を高温AFMを用いて観察することにより、PMMA表面のガラス転移温度がバルクに比べて大幅に低下していないことを明らかにしたこと。さらに、高温で動的にAFM観察することにより、表面の動的な挙動が観察が可能であることを見出したこと。
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Strategy for Future Research Activity |
分子平滑基板は、PMMA板を熱プレス成形して得られる。従来、高分子表面は溶媒キャスト膜等を用いて検討されているため、熱プレス等の影響で耐熱性が向上して観察されている可能性が残されている。次年度では、熱プレスした分子平滑面ではなく、通常の溶媒キャスト膜を用いて耐熱性の検討を進める。通常の溶媒キャスト膜は、熱プレスした分子平滑板に比べて、表面の凹凸が激しく、その上に積層した孤立鎖が観察できるかが課題である。高温での 動的AFM観察結果から、積層した孤立鎖が観察できなくても、耐熱性の評価は可能ではないかと現在考えている。
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Research Products
(12 results)