2021 Fiscal Year Research-status Report
Development of High Thermal Conductive polymers based on Beads-On-String-Shaped Design
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21K19003
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
中 建介 京都工芸繊維大学, 分子化学系, 教授 (70227718)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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Keywords | かご型シルセスキオキサン / ポリウレア / 水素結合 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、かご型シルセスキオキサン(POSS)ブロックと水素結合性有機ユニットが交互に結合した数珠玉構造デザインによる均一水素結合ネットワーク形成による効果的フォノン熱伝導経路を達成させるという従来にない概念によって、既存の材料では達成不可能なトレードオフを解消した高熱伝導性透明樹脂を開拓することを目的とする。2021年度はPOSS骨格の構造、POSS間距離および構造を系統的に変化させたポリマーの合成を行いそれらの物性評価を行った。 1)これまでにビスアミノPOSSモノマーと1,4-フェニレンジイソシアナートとの重合で得られるPOSS主鎖型ポリウレアが熱伝導率0.5 W/m・K以上でありながら、可視光透過率が80%以上、耐熱性200℃以上であることを見出している。この知見を基盤とし、ビスアミノPOSSモノマーと種々のジイソシアナートとの重合の検討を行った。その結果、ジイソシアナートの構造に依存してゲル化濃度が変化し、構造が剛直なジイソシアナートを用いた場合が、分子間水素結合がより促進されることで最も低濃度でゲル化することが分かった。このゲル化濃度は通常の低分子オイルゲル化剤と同程度あることがわかった。 2)側鎖に完全縮合型POSSユニットを有する側鎖型POSSポリマーには多数の研究例があるが、完全縮合型POSSユニットの対称性の高さに起因して、高濃度にPOSSユニットを含む側鎖型POSSポリマーから透明膜を得ることは困難である。そこで対称性を低下したジシラノールを一官能基化し、リンカー部位にウレタン基を導入したメタクリルモノマーを新たに合成し、これを基本骨格とするホモポリマーを合成した。得られたポリマーは側鎖に導入したウレタン基同士の水素結合によって高い耐熱性を示すと同時に高い透明性も有する材料であることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ビスアミノPOSSモノマーと種々のジイソシアナートとの重合により系統的に架橋部位の長さや極性を変化させたPOSS主鎖型ポリマーの合成を行い、架橋部位の構造と水素結合ネットワーク形成との関係を調査するという目的に対しては、構造が剛直なジイソシアナートを用いた場合が最も分子間水素結合が促進されることを見出したが、その熱伝導率は0.3 W/m・K程度と必ずしも熱伝導性が向上するものではなかった。しかしながら、ビスアミノPOSSモノマーと構造が剛直なジイソシアナートとを有機溶媒中、室温で混合すると重合の進行に伴って、通常の低分子オイルゲル化剤と同程度の濃度でゲル化が進行することがわかるなど、予想していなかった成果も得られた。また、POSSユニットを側鎖に導入したポリマーの多くは完全縮合型POSSユニットの対称性の高さに起因して、高濃度にPOSSユニットを含む側鎖型POSSポリマーから透明膜を得ることは困難であったが、対称性を低下させた一官能性POSSモノマーを新たに開発することで、POSSユニットを高濃度に含みながら高い耐熱性を示すと同時に高い透明性も有する材料の開発に成功するなどの成果を得たため、総合的におおむね順調に進展したと判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでにビスアミノPOSSモノマーと1,4-フェニレンジイソシアナートとの重合で得られるPOSS主鎖型ポリウレアが熱伝導率0.5 W/m・K以上でありながら、可視光透過率が80%以上、耐熱性200℃以上であることを見出しているが、フィルム作製条件によって熱伝導度が大きく影響し、現在のところ熱伝導率は0.3 W/m・K程度に留まっている。そこでPOSS骨格の構造、POSS間距離および構造を系統的に変化させたポリマーの合成を種々の溶媒を用いて行い、重合溶液をキャストしてフィルムを作製する。得られたポリマーフィルムに対して学内共同利用装置による粘弾性等の力学特性評価を行う。学内共同利用設備である走査型プローブ顕微鏡、走査型透過電子顕微鏡を用いることでナノ構造と種々物性との関係を評価する。これらと元素・分子レベルの構造評価と合わせてPOSS間架橋部位構造およびフィルム作製法と熱伝導率、可視光透過率、力学特性との関係を明らかにし、高熱伝導・高透明・高耐熱に加えてさらなる透明性の向上と柔軟性向上に向けた検討を行うことで、数珠玉構造デザインによる既存の材料では達成不可能なトレードオフを解消した革新的素材創出を可能とする革新的材料設計戦略を実現する。
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Research Products
(4 results)