2021 Fiscal Year Research-status Report
トポロジー制御したガラスの革新的薄膜合成方法の確立
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21K19016
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
小野 円佳 北海道大学, 電子科学研究所, 准教授 (20865224)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
JEEM MELBERT 北海道大学, 工学研究院, 特任助教 (00815805)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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Keywords | 薄膜アモルファス / トポロジー制御 / 結晶基板表面 |
Outline of Annual Research Achievements |
[本研究の目的]ガラスは通常その原子構造がランダムなため、構造制御による特性の制御や向上は難しい。しかし、代表者は近年高圧高温処理によりシリカガラスの構造秩序性が変化し、光学特性が向上することを明らかにした。特に圧力で空隙構造(原子の存在しない部分)の収縮が起こりやすいため、本研究では、格子定数が空隙サイズに近い結晶基板に接触成長させることで、特殊なトポロジーを有するガラスを作ることに挑戦している。 つまり、本研究は、従来 超高圧超高温を使わなければできないガラスのトポロジー制御を、結晶基板表面特有の活性な境界条件を利用して実現する、革新的ガラス(薄膜)合成法を構築することを目的としている。 [本研究の実施計画]本研究では、新しいコンセプトによる結晶基板上へのガラス薄膜の作製と構造評価を行い、ガラス構造の制御の可能性、特性向上の可能性を探ることを主な実施内容としている。このため、実施項目として順をおって下記の項目①~④を進めている。① 複数種類の結晶基板を使い、また、表面の活性状態を複数種類の製膜装置を用いて変えて、ガラス薄膜を制作する。② 作製したガラス薄膜の特徴を捉える評価方法を調べ、確立する。③ 作製したガラス薄膜の特性を調査し、特性の向上の有無を調べる。 ④ 2次元ガラスの構造や特性について、コンピュータシミュレーションを用いてモデル化を可能にする。これらを行うことにより、革新的ガラス薄膜合成法及び評価方法を構築することができると考えており、更に、ガラス構造や特性の次元による変化について議論できるようになれば新しい分野を築くことになり、非常に意義が大きいと考えている。 令和3年度の実績として、①、②を進めており、③、④に関しては調査や、研究協力者との議論を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
結晶基板として、空隙サイズに近い格子定数をもつサファイア基板、Si基板、LSAT基板、LiNbO3基板、LaAlO3基板、Ge基板を用意し、ALDを用いてガラス薄膜の合成を行った。 北海道大学では複数種類の製膜装置を有しており、CVD( Chemical Vapor Deposition ) やスパッタ製膜装置も用いて、今後製膜を行うことにしている。得られたガラス薄膜の評価をAFMを用いて行ったが、相違を見ることが難しく、他の光学的手法、陽電子を用いた測定法などの準備を進めている。製膜条件を調整可能なALDの導入に遅延があったことから、当初の計画より製膜が多少遅れた。 しかしながら、SiOからなるTEMグリッドを基板としてSiO2製膜を旧ALDで行うことができ、直接TEM観察が可能であることを見出した。このように製膜したSiO2薄膜の原子像を観測することができた。原子像には、リング様の形状が観察確認できたことから、合成手法、及び評価手法として大きな前進になったと考えている。またそれぞれのSiOの結合のエネルギー分散をTEM-EELSにより確認することができ、バルクのSiO2や、シリカライトなどと比較することによって、周囲の構造が異なる状態が生じていることが示唆された。 なお、物性の評価手法についても、検討を開始している。レーザーフラッシュ法を用いた熱拡散係数測定は他の研究室の装置を用いて共同研究が可能であるとわかり、準備を進めている。基板の熱伝導が大きい場合の測定精度については、パルスレーザーを用いた時間分解も可能であるとわかったことから、向上できると見込んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、計画それぞれ①~④について次のように推進する ① ALDに加えて、CVD,スパッタなどの複数の方法を用いて薄膜合成を行う。また合成条件を新ALDを用いて調整し、薄膜の構造変化を調べる ② より高精度なAFMを用いた構造観察に加え、光学的手法(エリプソメトリー、ラマン散乱、低角XRDなど)、また速度制御した陽電子を用いた表面のみの陽電子寿命法などを用いてアモルファス薄膜の構造評価手法の適切なものを選択していく。 ③ 基板の影響の少ないと期待されるものについて、パルスレーザーを用いた熱伝導特性の計測を行う。 ④ 2次元ガラスの構造や特性について、コンピュータシミュレーションを用いてモデルを構築する。(ペンシルバニア州立大学との共同研究)
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Causes of Carryover |
申請時には拡散係数の評価系の構築が必須と考えていたが、薄膜に適用できる熱拡散係数測定装置を北海道大学の他の研究室が保有していることがわかったことから、この装置を利用して研究を進めることにした。このため、評価装置の見直しを行い、令和3年度の使用額が減ることとなった。
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