2021 Fiscal Year Research-status Report
コーヒーリング効果の原子膜制御と高次集積技術への展開
Project/Area Number |
21K19023
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
長田 実 名古屋大学, 未来材料・システム研究所, 教授 (10312258)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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Keywords | 2次元物質 / ナノシート / コーヒーリング効果 / 単一液滴集積法 / マランゴニ対流 / 精密集積 |
Outline of Annual Research Achievements |
一滴のコーヒーを乾かすと、液滴の縁に粒子が環状に集まる。コーヒーリング効果と呼ばれるこの身近な現象は、コロイド粒子懸濁液の蒸発という一見単純な過程であるが、温度・濃度差によるマランゴニ対流、表面張力などが絡み合った複雑な現象である。本研究では、研究代表者らが最近発見した溶液の滴下・吸引操作によりコーヒーリング効果を抑制した精密集積を可能とする「単一液滴集積法」を手がかりに、コーヒーリング効果を理解、制御し、2次元物質(ナノシート)の新しい薄膜製造技術への展開を目指す。本年度は、コーヒーリング効果の制御機構の解明とともに、ナノシート集積技術への応用を目指した研究を推進した。 酸化チタンナノシートのコロイド水溶液をモデルケースに、ブリュースター角顕微鏡により、溶媒蒸発が誘起する粒子対流と表面吸着、ピン留め効果の動的挙動を観察し、コーヒーリング効果の制御機構の検討を行った。粒子濃度、粒子径、界面活性剤・アルコールの添加量を変化させたナノシートコロイド水溶液を準備し、溶液の条件、蒸発速度、基板温度などの操作因子が薄膜の配列構造に及ぼす影響を系統的に調査した。その結果、粒子濃度、蒸発速度、基板温度により、溶媒蒸発が誘起する毛細管流動、基板加熱によるマランゴニ対流、界面活性剤による表面吸着のバランスを調整することで、コーヒーリング効果の抑制・制御が可能であることを明らかにした。この制御機構に基づき、各種無機ナノシートの製膜実験を行ったところ、溶液の滴下・吸引操作という単純操作により、約30秒という極めて短時間で稠密配列膜の作製が可能となった。以上の検討を通し、高い2次元異方性を有するナノシートを利用することで特殊な移流集積が実現し、コーヒーリング効果を抑制・制御した高次集積の可能性を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初予定していたコーヒーリング効果の制御機構が解明され、各種無機ナノシートの製膜技術への展開が図れた。また、ナノシート配列の動的挙動を検討する過程で、2次元物質の新しい集積技術を開発し、特許出願した点も大きな収穫であり、当初を上回る進捗であった。
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Strategy for Future Research Activity |
グラフェン、半導体性酸化チタン、高誘電性ペロブスカイトなど、重要なナノシートを対象に、コロイド溶液の調整、製膜条件の最適化、大面積化の検討を進め、2次元物質の新しい集積技術として完成させる。本研究と関連する高品位ナノシートコロイド水溶液を製造する技術、ナノシートコーティング技術については、民間企業から多くの引き合いもあり、共同研究を通して実用化研究も推進する。
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Research Products
(16 results)