2021 Fiscal Year Research-status Report
遷移金属アトムシートの合成と二次元構造に基づく機能創成
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21K19028
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
伊田 進太郎 熊本大学, 産業ナノマテリアル研究所, 教授 (70404324)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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Keywords | 金属ナノシート / アトムシート / ニッケル / 水素貯蔵 |
Outline of Annual Research Achievements |
二次元物質に関する研究はグラフェンの登場以来、様々な材料系で実施されてきたが、金属原子が二次元に配列した原子1個の厚みを持つ“金属アトムシート”の合成は非常に難しい。金属材料は次元性が変化することで、その表面物性が変化し、ナノ粒子、ナノクラスター、原子と粒子を構成する原子の数が減少するにつれ、触媒活性が劇的に変化することは金クラスターの研究等すでに明らかになっている。金属原子1層からなるアトムシートは、ナノクラスターと原子の間に位置すると考えられ、点である原子の反応性を面として取り出すことが可能になるともに、アトムシートに特徴的な化学反応性も大いに期待される。Niの場合、バルク結晶は、面心立方格子であり、わずかに層の重なり異なる2層(A-B-A-B-A)の繰り返し構造を持つ。本研究では、ニッケルの1原子層からなるニッケルアトムシートを合成し、その化学反応性をニッケルナノ粒子と比較した。その結果、ニッケルと水との反応において自由エネルギー変化を実験的に求めたところ、ニッケルアトムシートの方がニッケルナノ粒子よりも小さい値を示すことが示された。この結果は、ニッケルの次元が二次元に変換されることで、化学反応性が変わることを示唆している。現状では、ニッケルアトムシートの収率が高くないため、求めた自由エネルギー変化は過小評価している可能性もあり、さらなる研究が必要であるが、合成したニッケルアトムシートは水と反応して殆ど発熱反応せず水素を放出できる間接的な水素貯蔵媒体として機能することも明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ニッケルアトムシートは、厚さ方向に金属原子1個が配列した水酸化ニッケルナノシートを水素中で熱処理することで合成した。水酸化ニッケルナノシートを水素中300℃で熱処理した後に原子間力顕微鏡で、ニッケルアトムシートの厚さを確認すると、原子1個の厚さに対応する厚さ0.25nmのシートが観察された。大気中に出すと、一瞬で酸化し、ニッケルアトムシートの高い化学反応性を確認した。また、大気非暴露で水と反応させて水素を発生させ、水素分圧と水蒸気分圧を測定することで、ニッケルアトムシートが水と反応する自由エネルギー変化を計算し、バルク金属と比較することで、アトムシートの化学反応性を調査したところ、ニッケルアトムシートの方がニッケルナノ粒子よりも小さい値を示すことが示された。この結果は、ニッケルの次元が二次元に変換されることで、化学反応性が変わることを示唆している。また、合成したニッケルアトムシートは水と反応して殆ど発熱反応せず水素を放出できる間接的な水素貯蔵媒体として機能することも明らかとなった。このように、進捗状況として、ニッケルアトムシートの合成手法を開発し、通常のニッケルナノ粒子とは異なる化学的性質を見出しており、おおむね順調に研究目標を達成している。
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Strategy for Future Research Activity |
間接的にニッケルアトムシートの合成は確認されたが、構造解析ができていない状況である。今後は、ナノテク支援のネットワーク等を利用してHR-TEM測定を実施して、ニッケルアトムシートの構造を明らかにすることを目標とする。また、水酸化ニッケルナノシート粉末をNiアトムシートにする時にシート同士が凝集してしまい、アトムシートを単体で取り出せない課題がある。そこで、今後は、凍結乾燥法や噴霧加熱還元法等を検討することで凝集抑制し、高い収率でニッケルアトムシートが存在するナノシート粉末の合成を検討し、水と反応して殆ど発熱反応せず水素を放出できる間接的な水素貯蔵媒体として十分に機能するか調査する予定である。
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Causes of Carryover |
コロナ科で予定していた出張が取りやめになったことと、購入を予定した装置が半導体不足で購入できなかっため、次年度使用額が発生した。使用計画としては、研究をさらに加速させるため、研究員を雇用する予算として使用を計画している。
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Research Products
(1 results)