2022 Fiscal Year Research-status Report
Structures/Energetics Manipulation by High Pressure: A New Proposal "Molecular Elasticity"
Project/Area Number |
21K19029
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
阿部 正明 兵庫県立大学, 理学研究科, 教授 (90260033)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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Keywords | 高圧 / 錯体 / 結晶 / 構造 / 発光 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、多核金属錯体を構造単位とした集積化ネットワーク結晶を構築し、その特異な電子物性・発光特性・磁気特性を検討し新しい物質材料を開発すること、さらに静水圧印加を基軸とした分子構造・ネットワーク構造の異常変形・構造歪みによる物性制御の指針を見出すことを目的としている。この方針のもと本年度は以下の研究成果を得た。 (1) フォトルミネッセンスを示す多核金属錯体結晶の高圧単結晶構造解析:キュバン骨格{Cu4I4}を有する[Cu4I4(PPh3)4]錯体 (PPh3 = トリフェニルホスフィン)は単斜晶系結晶を与える。静水圧印加時の単結晶X線回折実験を行った。ダイヤモンドアンビルセル (DAC) 内に封入した結晶試料からのX線回折データのコンプリートネスの向上を図るためアンビル中に複数の結晶を設置し回折実験を試みた。4.4 GPaの圧力下において{Cu4I4}キュバン骨格が分子対称性を保持しながら捻れ変形していることを見出した。これは先に示された高対称性のキュバン錯体が対称性を保持しながら捻れ変形する現象と一致しており、申請時に提唱した「分子弾性」メカニズムを実験的にさらに実証する結果と解釈された。 (2) 遷移金属三核錯体をユニットとした水素結合型ハニカムネットワーク結晶の構築と磁気特性:イソニコチンアミド(ina)を導入したRu三核錯体は、ina配位子の分子間水素結合によりハニカム型ネットワーク構造をもつ3つの多形結晶、すなわち平面ハニカム、溶媒包接型平面ハニカム、および波型ハニカムの各構造を与える。本年度は新たに、より汎用性の高い3d金属Cr、Mn、Feへ拡張できるか検討したところ、CrについてRuの波型ハニカムと同形の結晶を得ることに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
フォトルミネッセンスを示す多核金属錯体結晶の静水圧環境における構造解析と固体発光のテーマについては、今回のキュバン型[Cu4I4(PPh3)4]錯体に加え、置換体である[Cu4I4(PpTol3)4] (PpTol3 = トリ(para-トリル)ホスフィンの2つの多形結晶(tetragonal晶系とtrigonal晶系)とtrigonal晶系の結晶にゲスト分子が包接された[Cu4I4(PpTol3)4]G (G = Et2O, cyclohexane, THF)を単離し単結晶X線回折実験により構造決定した。次いでDACを用い、常圧(0.1 MPa)から約10 GPaまでの静水圧下における固体発光ピエゾクロミズムを観測した。ゲスト包接結晶はいずれも、昇圧に伴い可視部の発光ピークはレッドシフトしたが、その推移は一様でなく、ゲスト種に応じて異なる圧力で急激に起こった。これは、結晶空隙を占有するゲスト分子が発光中心である{Cu4I4}クラスターコアの歪み変形に大きく影響していることを示唆している。これは当初想定しなかった興味深い発見であり、今後ゲストをさらに多様化した試料を作製することで、静水圧印加における構造歪み、発光変化、そのゲスト効果等を系統的に検討することができる。
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Strategy for Future Research Activity |
フォトルミネッセンスを示す多核金属錯体結晶の静水圧環境に関するテーマでは、本年度見出した研究結果を基盤とし、今後ゲスト分子の種類や包摂分子数、ホスト骨格の結晶構造をさらに多様化した試料を新たに作製することにより、静水圧印加時の構造歪みやピエゾクロミズム、およびそのゲスト効果を系統的に検討する。最後にこれらの成果をまとめ、分子弾性に関する本研究成果を総括する。 遷移金属三核錯体をユニットとした水素結合型ハニカムネットワーク結晶の構築と磁気特性に関するテーマでは、今回合成に成功したCrに加え、種々の3d金属へ拡張すること、Ru波型ハニカムと同形結晶を与えるものについてはRuとのハイブリッド化した3d-4d混合金属系のネットワーク構築とその機能開発を目指す。さらに、SQUID法による磁化率測定を行うことで、常磁性M3コア間の磁気的相互作用について検討するとともに、電極表面へネットワーク構造を維持したまま薄膜化することを検討し、遷移金属のレドックス活性と配位能、ネットワークフレームワーク内に生成された結晶空隙、チャネル構造を活用したイオン伝導、プロトン伝導の発現、さらには水素発生反応(HER)、酸素発生反応(OER)の可能性についても検討する。
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Causes of Carryover |
静水圧実験にはSPring-8のビームラインを使う実験が含まれるが、ビームタイムが限られたこともあり、期間内に達成したい構造研究が十分でなく、課題が残された。当初目的を達成するため次年度へ繰り越す。繰り越し額は、主に静水圧実験に必須となるダイヤモンドアンビル(消耗品)、静水圧印加での同時計測に必要な蛍光光度計(少額備品)の購入にあてる。さらに、本研究の成果を公表するため、学会発表のための旅費、論文発表する際のカラー印刷代および表紙絵作成費にも充当する。
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[Presentation] Vapochromic Gate-Open-Close Crystals of a Rhenium(I) Complex2022
Author(s)
Yuki MATSUDA, Ryota NAKAMURA, Yoshiki OZAWA, Keishiro TAHARA, Toshikazu ONO, Nobuto YOSHINARI, Takumi KONNO, Kunihisa SUGIMOTO, Shintaro KOBAYASHI, Shogo KAWAGUCHI, Masaaki ABE
Organizer
The 4th International Symposium of Ionic Coordination Compounds (ISICC-4)
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[Presentation] Reversible Conversion of Multiple Non-Covalent Interactions in Vapochromic Gate-Open-Close Crystals of a Rhenium(I) Complex: In-Situ Observation of the Guest-Induced Structural Transformation Dynamics2022
Author(s)
Yuki MATSUDA, Ryota NAKAMURA, Yoshiki OZAWA, Keishiro TAHARA, Toshikazu ONO, Nobuto YOSHINARI, Takumi KONNO, Kunihisa SUGIMOTO, Shintaro KOBAYASHI, Shogo KAWAGUCHI, Masaaki ABE
Organizer
錯体化学会第72回討論会
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