2021 Fiscal Year Research-status Report
Novel cancer therapeutic system using endogenous antibody
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21K19055
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
片山 佳樹 九州大学, 工学研究院, 教授 (70284528)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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Keywords | ADCC / エフェクター作用 / ナチュラルキラー細胞 / がん / がん免疫療法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、がんの一般的性質であるpH低下などによってがん細胞に結合するペプチドをもちい、内在性抗体をがん細胞にリクルートして、免疫細胞を活性化するエフェクター作用を利用してがんを殺傷する分子システムの開発を目的としている。2021年度は、pH低下でヘリックスを形成して細胞膜に結合するペプチド配列を、ゲノムデータベースの膜貫通配列や既存の報告例を利用して種々設計・合成して、その膜結合能力とpH依存性を評価した。従来報告されている配列では、pH低下に伴いペプチド同士の凝集が見られることが分かり、配列を制御することでpH低下に伴って細胞表面に集積させることに成功した。 そこで次に、このペプチドに、以前開発した抗体のFc領域に結合する環状ペプチドをクロスリンカーによって結合したところ、実際にがん組織での低pHで抗体を細胞表面にリクルートすることに成功した。これにより、基本的に当該ペプチド配列が目的に供し得ることが実証できた。ただ、これを用いてナチュラルキラー細胞の活性化を試みたが有意な活性化は見られなかった。種々の評価から、エフェクター作用誘導が見られない原因は、抗体との結合力が不十分であることに基づくと考えられた。 これらの結果を踏まえ、抗体結合力が強力なプロテインGの抗体結合ドメインをpH応答ペプチドに種々のリンカー配列によって結合した融合タンパク型の分子を複数種設計して、遺伝子を構築後、大腸菌から発現精製して目的物を得た。抗体結合力を上げるため、プロテインG抗体結合ドメインを2つ連結したタイプでは抗体を架橋してしまい凝集が見られたが、1つ導入した場合では、明確な抗体の細胞への集積に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
pH応答型のペプチドとして、当初、既報のペプチド配列を利用することを予定していたが、実際にはこのペプチドはpH低下により凝集することが明らかとなった。報告されている細胞集積性は、凝集体が細胞に吸着している可能性が高いことが分かった。そこで、新たにpH応答性が高く、凝集が起こらない配列を探索する必要が生じた。ただ、探索と評価を繰り返し、時間はかかったが理想的な応答性を有する配列を見出すことができた。これを利用して、抗体を細胞にリクルートする分子設計の基本も確立でき、種々の分子を合成することにも成功している。2022年度にこれらのエフェクター作用の評価を行える状況を考えると、研究は順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度に複数の可能性のある分子を大腸菌から発現・精製に成功したので、2022年度はこれらを用いて、抗体をがん細胞に集積させて、ナチュラルキラー細胞の活性化能を評価する。得られた結果から、さらに優れた分子構想にチューンアップして分子を開発する。本分子システムによるADCCの惹起には、pH応答型抗体リクルート分子のがん細胞への集積能、pH応答能、抗体との結合能など複数の因子が交絡するので、それらを調節するためのリンカーの構造や長さ、柔軟性、抗体結合ユニットの大きさや結合力など多くの因子を最適化する必要がある。これらを得られる結果を基に逐一変化させていき、最適のADCC誘起能を有する分子に迫る予定である。 最適な分子が得られれば、担癌マウスを用いたn vivoでのがん集積能、抗体集積能、血中滞留能、がん殺傷能などを評価して、本研究の目的である新規な西岸システムの基礎を確立する。
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Causes of Carryover |
当初、2021年度中にがん殺傷分子を開発して動物評価まで実施する予定であったが、コロナ禍での研究時間確保が困難であったことと、ペプチド配列の最適化を新たに実施しなくてはならなかったことから、今年度は、化合物の合成と基礎評価を実施した。今年度、計画よりもたくさんの分子を合成したので、それらの評価と動物評価を合わせて次年度に実施するため、翌年度分と合わせて使用する。
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Research Products
(11 results)