2021 Fiscal Year Research-status Report
Functional expression system for plant ion transport system in Escherichia. coli
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21K19060
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
魚住 信之 東北大学, 工学研究科, 教授 (40223515)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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Keywords | イオン輸送体 / リン酸化 / 植物 / 機能発現 / カリウム |
Outline of Annual Research Achievements |
植物K輸送体を発現させて,新規K輸送活性の測定を行うための宿主大腸菌の変異株の作成を行った.大腸菌に存在する4種類のK取込み輸送体(TrkG, TrkH, Kup, Kdp)の遺伝子の多重変異株の作成を行った.従来から利用されている4つの輸送体の不活化変異株は,TrkGとTrkHの調節因子であるTrkAの遺伝子を不活化しているためTrkGとTrkHの遺伝子はintactである.申請者による変異株は輸送体本体の4つの遺伝子を欠損している.このため,何らかの理由で弱いK取り込み活性を有する輸送体が復活する可能性は全くない.作成した大腸菌の四重変異株と従来の変異株のK依存性を比較したところ,今回作成した変異株のK要求性が高いことが分かった.今後のK輸送活性の検討に用いることができる.シロイヌナズナの機能が不明となっている3つのK輸送体を変異株に導入したところ,全てにおいて1つは大腸菌のK要求性を相補することが分かった.次に,酵母のK要求性変異株をもちいて,この3つのK輸送体の機能活性を検討したところ,意外にも1つのK輸送体遺伝子の導入で酵母のK要求性が相補された.このことは,植物細胞においても細胞膜に発現する輸送体であることが示唆される.この時点で,K輸送活性が明らかとなり植物で何らかの役割を持つことを示唆している.細胞内酵素や調節因子がK輸送体の機能調節に関わっていることから,現在,リン酸化酵素遺伝子を酵母に導入してK輸送体を活性化する因子の同定を行っている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
植物K輸送体の解析を可能にするために,K輸送機能に敏感な大腸菌変異株の作成した.従来から広く利用されている変異株とは異なる大腸菌多重変異株となり,比較することで今後の植物K輸送体機能評価の検出感度を上昇させることに貢献する可能性が高い.国立遺伝研より取り寄せたKeio collectionの単独変異株を用いて,四重変異株の作成をP1-transductionおよびPCRを用いたDatsenko & Wannerの方法で行った.多段階変異株であることから,抗生物質遺伝子の除去作業を行った.なかでもその除去が行えない変異株も存在したことから,変異導入の順序を代えて多重変異株の作成をすすめた.完成した四重変異株は,従来のTrkの補助因子の遺伝子を不活化した大腸菌変異株よりもK要求性が高くなった.次に,植物のK輸送体候補遺伝子を大腸菌に導入してK制限の寒天培地において段階的なK濃度によって増殖の有無を検討した.3つのうち1つは明瞭な増殖を示し,もう一つはベクターのみの大腸菌と比較して,生育することが分かった.酵母のK輸送系の変異株を用いて植物K輸送体の活性を検討した. 1つのK輸送体候補遺伝子の導入株においては,優位に低K濃度培地において増殖した.Ca依存性リン酸化酵素がいくつかの輸送体を活性化することが分かっていることから,酵母細胞膜において発現するK輸送体がリン酸化酵素の活性化によってK輸送活性化を示す可能性について検討するために,リン酸化酵素遺伝子をプラスミドに導入するための構築作業を行った.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の測定でK輸送活性をもつことがわかったK輸送体については,植物におけるK輸送活性の役割を調べる.このために,植物変異株の取得,様々な培地における生育実験をすすめる.また,組織別および時期特異的な遺伝子発現についても調べるために,β-glucuronidase遺伝子をプロモーターに連結した遺伝子を植物に導入する.さらに,大腸菌に発現を示したK輸送体においては,細胞小器官に発現している可能性も高いことから,細胞内局在性を調べる.このために蛍光タンパク質GFPを融合したコンストラクトを作成して植物に導入する.酵母変異株において,リン酸化酵素の共発現によるK輸送系を活性化する分子の単離をめざす.特に260種類の酵母への導入を完成させて,植物CBL-CIPK複合体によるリン酸化酵素とK輸送体の酵母共発現は複数回繰り返すことで真の輸送活性に近づける.
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