2021 Fiscal Year Research-status Report
土壌細菌群集における栄養資源の「勝者独り占め現象」の詳細とそのメカニズムの解明
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21K19068
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大塚 重人 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 准教授 (10313074)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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Keywords | 土壌微生物 / 土壌生態系 / 炭素源 / 群集構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)黒ボク土の畑土壌を供試して土壌ミクロコズム(微小な土壌生態系)をつくり、そこに、炭素源としてグルコース、キシロース、クエン酸、ガラクツロン酸をそれぞれ単独で添加し、4週間のインキュベートを行った。土壌を経時的に分取してDNAを抽出し、16SリボゾームRNA遺伝子の部分塩基配列をPCR増幅して精製した。現在、そのようにして得られた約200の土壌サンプルに由来するDNA試料について、次世代シーケンサーによる塩基配列の大量解読を業者に委託している。これまでに約100サンプルのデータの納品を受け、現在、残りのデータの納品を待っている状況である。データが届き次第、アノテーション等を行い群集構造解析に進む。 また、(2)上記の炭素源を単一炭素源とする培地を用い、同じ土壌から細菌を分離した。細菌の16SリボゾームRNA遺伝子を解読し、系統解析を行って、属レベルまで同定を行った。この塩基配列と (1)の塩基配列を比較・照合する。(1)のデータが全て納品されてから詳細に比較することになるが、これまでのところ、(a) ある炭素源を(培地上では)資化できたが土壌中では増殖できなかった「敗者の細菌」(または注意深く増殖を抑制していた細菌)に相当する分離株が得られている。また (b) 土壌中の勝者であり培養可能でもある細菌も分離されている。16S rRNA遺伝子塩基配列に基づき近隣結合法によって作製された系統樹においては、今のところ「勝者の細菌」と「敗者の細菌」との間に、明確な系統的差異や傾向は認められていない。今後は炭素源と生育速度の関係の解析など、生理性状の解析に進む。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
まず、Covid-19感染拡大への対応から、2021年度の最初の頃は、研究室に滞在する人数を制限していたため、研究の開始と初期の進行に遅れを生じた。 さらに、研究協力者の実験技術の習得に、当初予想していたよりも大変多くの時間がかかり、またミスによりいくつかの実験の過程をやり直す必要が生じた。そのため、想定していたよりも研究の進行が遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在まで研究の進行は遅れているが、遅れをもたらした原因はほぼ解決したため、今後の研究の進行には問題ないと考えられる。
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Causes of Carryover |
別記の通り、研究の進行が遅れているため、2021年度に予定していた解析がすべては終了しておらず、そのため次年度使用額が生じた。遅れている実験は、このまま研究を継続して2022年度に行い、そこで残りの研究費を使用する予定である。
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