2021 Fiscal Year Research-status Report
Investigation for unrevealed lytic pathway of polysaccharides initiated with oxidation of a hydroxyl group
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21K19070
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
北岡 本光 新潟大学, 自然科学系, 教授 (60353984)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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Keywords | β脱離 / セルロース / 酸化 / セロビオースホスホリラーゼ / ピラノースオキシダーゼ |
Outline of Annual Research Achievements |
還元末端2位が酸化されたセルロースのモデル化合物である2-ケトセロビオースの酵素合成法を検討した。2-ケトグルコースがセロビオースホスホリラーゼのアクセプター基質となることを確認した。2-ケトグルコースおよびαグルコース1リン酸を原料とした合成法を通常の酵素反応条件である30℃で行ったところ、反応液に白色沈殿が生じ反応は進行するもののセロビオースホスホリラーゼが早期に失活する現象が観測された。そこで種々条件を検討し、セロビオースを出発原料として、触媒量のリン酸の存在下にピラノースオキシダーゼとセロビオースホスホリラーゼを10℃で作用させる方法を試みたところ効率よくセロビオースを2-ケトセロビオースに変換することに成功した。 合成した2-ケトセロビオースの構造をNMRにより確認した。還元末端の2-ケトグルコース残基は、グルコース構造としての環化物であるα-およびβ-ピラノースに加えて、フラクトース構造による環化物として、β-フラノース、β-フラノースの4種の平衡混合物として存在していることを明らかにした。フラクトース型の環化物は1位がヘミアセタール化されていない遊離のアルデヒドである。この結果から、遊離アルデヒド基がタンパク質のリジン残基と反応することにより2-ケトセロビオースが酵素の失活剤として作用していることが示唆された。 2-ケトセロビオースは比較的不安定であり、30℃において中性条件下でpHの低下を伴いグルコースを生成して分解することを確認した。この結果は、当初予想通り2-ケトセロビオースはβ脱離反応により非酵素的に分解することを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究初年度に目的モデル化合物の一つである2-ケトセロビオースの調製に成功し、これが常温中性条件下に分解することを確認するなど、当初の予定通りの成果を得ている。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度に調製した2-ケトセロビオースの各pHおよび温度における分解速度を測定し、既に報告している1-デオキシ-2-ケトセロビオースの分解速度と比較を行う。さらに、非還元末端残基および中間残基の2位が酸化されているセルロースのモデル化合物の酵素合成ルートを検討し、これらの化合物を調製する。さらに、これらの分解速度を測定するとともに分解産物の同定を行う。モデル化合物によりセルロース2位酸化により常温・中性条件下での有意な分解速度が観測され、かつ分解産物のNMRでの同定に成功すれば、数種のLPMO等の酸化酵素による反応解析を試みる。セロオリゴ糖に作用させたときの生成物をNMRで確認することにより、結合位置以外を酸化している可能性について検討する。
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Causes of Carryover |
コロナ禍のため、予定していた学会出張旅費などの支出が不要になった点と、研究が順調に進捗したことにより物品費の額が予定より少なくなったため次年度使用額(281,483円)が発生した。 繰り越しになった研究費は、主に物品費に充当することによりさらなる研究の加速を図る。
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