2023 Fiscal Year Annual Research Report
化学・ゲノム科学的手法による植物の新規ペプチドシグナリング解明
Project/Area Number |
21K19074
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
田畑 亮 名古屋大学, 生命農学研究科, 特任講師 (30712294)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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Keywords | 分泌型ペプチド / 短鎖翻訳後修飾型ペプチド / システインリッチペプチド / 環境ストレス応答 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、植物は、低分子の植物ホルモンのみならず、ペプチド分子による器官間シグナル伝達機構を介して個体のホメオスタシスを維持している事が明らかになってきた。しかしながら、ゲノム情報より、植物は約1000 個の分泌型ペプチド遺伝子を保持している事が予想されているが、機能解明された因子の数は限られている。植物が持つ機能未知の分泌型ペプチドの中には、環境ストレス応答における器官間シグナル伝達に必須の因子が、さらに多数存在しているのではないかと期待されている。そこで本研究では、環境ストレスに応答した器官間シグナル伝達機構と、それを支える器官間移動性のペプチド分子に着目して、化学的・ゲノム科学の研究アプローチによって、ストレス応答に必須の新規ペプチド分子を探索することを目的とした。 これまで、トマトより採集した維管束液からタンパク質抽出を行い、nano LC-MS によるペプチドミクス解析を行うことで、複数のトマト硫酸化ペプチド(短鎖翻訳後修飾型ペプチド)を複数同定した。また、シロイヌナズナを用いて、DNA修復因子の変異体背景でゲノム編集を実施して(Tandem cluster破壊法)、ゲノムに大きな欠失を引き起こすことで、鉄欠乏によって誘導されるCysteine-rich peptide(CRP)の破壊株作出に成功した。このCRP tandem破壊株は、野生型と比較して生育が阻害されており、RNA-seq解析の結果、低酸素ストレス応答に関与する遺伝子群の発現量が低下していることがわかった。相補株では、これらの表現型や遺伝子発現変動は回復した。また、実際に、このCRPペプチド三重破壊体では冠水実験による生存率の低下が観察された。したがって、このCRPは、低酸素ストレス応答における新規ペプチドシグナリングに重要な役割を持っていることが示唆された。
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