2022 Fiscal Year Research-status Report
核はなぜ球なのか?:細胞核形態のダイナミズムと生理機能の合目的性の探索
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21K19079
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
井上 善晴 京都大学, 農学研究科, 教授 (70203263)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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Keywords | 酵母 / 核分裂 / 核形態 / Cdc28 / DNA損傷チェックポイント |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、解糖系の過程で生じる代謝物メチルグリオキサール(MG)により酵母の核形態がジェリービーンズのように変形するメカニズムと、核分裂阻害に関わるメカニズムを明らかにすることを目的とする。 これまでの解析から、MG処理により液胞が肥大化し、核形態がジェリービーンズ型に変化するとともに核分配が阻害されることを見出している。また、液胞の融合ができないvps41やvam3欠損株ではMG処理による液胞の融合・肥大化が起こらず、ジェリービーンズ型の核形態を示さず、さらに核分裂阻害も起こらなかった。MGはDNAのグアニン残基と結合してadductを形成することが知られている。そこで、DNAダメージがシグナルとなって液胞の肥大化が起こるのかどうかを検討するため、DNAのアルキル化剤であるメタンスフホン酸メチル(MMS)で処理した際の変化を検討した。その結果、MMS処理では液胞の肥大化は起こらなかった。 MG処理で核分配が阻害されることから、G2/M期で細胞周期のアレストが起こると考えられる。そこで、Cdc28のTyr19のリン酸化を検討したところ、MG処理でもMMS処理でもCdc28-Tyr19のリン酸化が起こった。また、そのリン酸化はvps41やvam3欠損株でも同様に観察された。一方、DNA損傷チェックポイントのセンサータンパク質であるMec1の欠損株におけるCdc28-Tyr19のリン酸化を検討した。その結果、MMS処理ではCdc28のTyr19のリン酸化は見られなかったのに対し、MG処理では依然としてリン酸化が観察された。このことから、MGによる液胞の肥大化とCdc28-Tyr19のリン酸化は独立して起こっており、後者はMec1に依存していないと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度の研究から、MGによる核形態の変化と核分裂阻害との関連性において、液胞の肥大化とPtdIns(3,5)P2レベルの上昇の2つが必要な条件であることを明らかにすることができた。今年度は、DNA損傷と細胞周期の観点から検討を行い、MGはDNA損傷チェックポイントのセンサータンパク質であるMec1非依存的にCdc28-Tyr19のリン酸化を引き起こすこと、また液胞の肥大化の有無はCdc28-Tyr19のリン酸化に関与しないことを明らかにできた。一方、DNA損傷を引き起こすMMSは液胞の肥大化は引き起こさなかったが、Mec1依存的にCdc28-Tyr19のリン酸化を引き起こした。これらのことから、MGとDNA損傷チェックポイントの活性化の有無が核形態の異常や核分配阻害と関連するかどうかが問題であるが、その解明には至らなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
MGによる核形態の異常や核分配阻害がDNA損傷チェックポイントに依存しているかどうかをATMやATRに着目して、Rad53やChk1のリン酸化などの検を指標に検討を行う。また、紡錘体形成チェックポイントに及ぼす影響について、Mad2の欠損株を用いた解析を進める。
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Causes of Carryover |
2022年度の研究計画が当初予定していた通りには進捗しなかったため、未使用の助成金を繰越すことになった。2023年度では研究補助者を2名雇用することで、研究の大幅な進捗を図る予定である。
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Research Products
(3 results)