2021 Fiscal Year Research-status Report
Molecular design of light-harvesting complex absorbing whole visible light
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21K19085
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
長尾 遼 岡山大学, 異分野基礎科学研究所, 特任講師 (30633961)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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Keywords | 光合成 / 植物・藻類 / 集光性色素タンパク質 |
Outline of Annual Research Achievements |
光合成生物は、太陽光エネルギーを捕集するために集光性色素タンパク質(Light-harvesting complex, LHC)を発達させてきた。LHCは光合成生物毎に種類が異なり、結果として見た目の色の違いが生じる。色の要因は可視光を吸収する色素分子にあり、主要色素としてクロロフィル(Chlorophyll, Chl)とカロテノイド(Carotenoid, Car)が存在する。もしLHC内のChlやCarの種類および結合様式を自在に設計することができれば、可視光領域の全波長を吸収するLHCを創ることが可能かもしれない。本研究は、分子設計した褐色LHCを用いてアポタンパク質に対する色素分子の結合選択制およびホロタンパク質の機能を紐解くことにより、吸収波長を変化させた褐色LHCの分子メカニズムを明らかにする。また、褐色LHCの研究を足掛かりとし、広範囲の可視光を捉えることができるLHCの創出を目指す。 当該年度では、大腸菌を用いて発現させた褐色LHCアポタンパク質と色素分子の再構成を実現した。褐色LHCの遺伝子をコードするプラスミドを発現系大腸菌C41(DE3)に形質転換し、IPTGによる発現誘導を行ったところ、封入体への発現を確認した。Chl a, Chl c, fucoxanthin, diadinoxanthinの混合物と共に封入体のリフォールディングを試したところ、立体構造解析によって得られた野生型褐色LHCと同程度の分子量を持つリコンビナント褐色LHCが再現できた。しかし、色素の結合が緩く、条件によっては脱離してしまうことが判明したため、さらなる条件検討が必要であると判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
大腸菌を用いて発現させた褐色LHCアポタンパク質と色素分子の再構成によって、LHCホロタンパク質が得られた。従って、当初の計画通り本研究は進行している。しかし、ホロタンパク質の色素結合保持能が低いことが判明した。この点は予期していなかった点であり、次年度に改善が必要な点として挙げられる。 ホロタンパク質の色素保持能の低さが露呈したため、個々のChlやCarの結合親和性を試す研究までは進めることができなかった。この点で本研究計画の一部が遅延している。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは、LHCホロタンパク質の色素結合保持能を向上させるための条件検討を行う。具体的には、buffer組成、界面活性剤の条件を検討する。次に、ChlやCarの中でどの種類が特異的に結合し、構造安定化に寄与しているか突き止める。最後に、色素結合サイトの周辺に部位特異的変異を挿入し、色素分子の配位子となりえるアミノ酸を同定する。変異体の機能評価により、個々の色素分子の役割を明らかにする。
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