2021 Fiscal Year Research-status Report
モデル糸状菌アカパンカビを用いたウイルス研究フロンティア
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21K19086
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
近藤 秀樹 岡山大学, 資源植物科学研究所, 准教授 (40263628)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 信弘 岡山大学, 資源植物科学研究所, 教授 (70206514)
本田 信治 福井大学, 学術研究院医学系部門, 助教 (90632167)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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Keywords | ウイルス / アカパン株 / モデル糸状菌 / ウイルス-宿主相互作用 / 抗ウイルス機構 / RNAi |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題では、菌類ウイルス学のモデル実験系を構築するため、代表的な実験系糸状菌の一種であるアカパンカビを用いてウイルス学を展開するための基盤整備を進めている。以下に本年度の研究実績を示す。 柱① アカパンカビの感染性ウイルスを用いたウイルス学:先の報告で見出されたアカパンカビに自然感染する新規ウイルスの性状解析を進を進めている(Hondaら, Nature Comm 2020、未発表)。これまでに、Neurospora crassaのNGSデータでデルタフレキシ及び新奇RNAウイルス(配列断片)が見出された菌株をついて、感染ウイルスのゲノム配列解析を進めている。さらに、Neurospora intermediaのNGS解析で見出されたウイルス様コンテイグ(フザリウイルス、ミトウイルス、デルタフレキシウイルス)について、元菌株のRT-PCRによりその存在確認と部分配列の決定をおこなった。一部ウイルスについては、3'RLM-RACEによる末端配列を進めている。これらのウイルスのRdRP配列に基づく分子系統樹(最尤法)を作成し、系統学的位置付けを検討した。 柱② ウイルス病徴発現・複製、防御機構/ウイルス反撃に関与する因子の同定と機構解明:N. crassaの抗ウイルスRNAi機構の鍵酵素であるdcl1, dcl2 qde2の単独欠損変異株(dcl1、dcl2, qde2)、二重欠損変異株(dcl1/dcl2, qde2/dcl1, qde2/dcl2)、三重欠損変異体(qde2/dcl1/dcl2)および野生型を用いて、異なるゲノムタイプの二種マイコウイルス(一本鎖RNAウイルスと分節型dsRNAウイルス)の混合感染株をそれぞれ作出した。これらの混合感染株について全RNAを抽出し、小分子RNA分画のRNA-seq解析を行った。現在,得られたRNA-seqの配列データの詳細解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
糸状菌アカパンカビのマイコウイルスは、2020年の我々の報告(Hondaら, Nature Comm 2020)が初めてであり、アカパンカビにおけるマイコウイルスの多様性や感染動態に関してはほとんど判明していない。本研究では、先のNGSデータ解析で存在が示唆されていたマイコウイルスの実態を検証し、ゲノムの全貌が判明していないウイルスにつての解析を進めている。我々の先行研究において、アカパンカビにおいてもRNAi機構が抗ウイルス応答の要であることを示唆しているが、抗ウイルスRNAiの実働部隊である低分子RNA産生にRNAi鍵酵素がどのように関与しているかは不明である。そこで、小分子RNA産生に関わるダイサー(dcl1とdcl2)に加え、RISC成分であるアルゴノート(qde2)に注目し、それらの単独及び多重(二重、三重)欠損変異株へ二種RNAウイルス(異なるタイプ)の再導入に成功している。すでに小分子RNAのRNA-seqデータの取得に成功し、解析が進行中である。以上の研究進捗や成果から、モデル糸状菌であるアカパンカビでも菌類ウイルス学を展開可能であることが示されつつあり、本課題は当初計画通り順調に進んでいると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、研究実施計画は以下の通りである。 柱① アカパンカビの感染性ウイルスを用いたウイルス学:現在解析中のアカパンカビウイルスのゲノム解析を継続する。それらのアカパンカビ感染株に加え、異種菌由来のマイコウイルス感染菌株も作出し、それらのウイルスの感染動態や宿主表現型、宿主遺伝子の発現変動を解析する。異種菌由来のマイコウイルスについてはアカパンカビにおける安定性や次世代への伝搬性を調べる。さらに、植物ウイルスが生物界の障壁を越え菌類であるアカパンカビへ感染可能であるか検証を行う。 柱② ウイルス病徴発現・複製、防御機構/ウイルス反撃に関与する因子の同定と機構解明:初年度に取得した小分子RNAのRNA-seqデータの解析を進め、RNAi機構の鍵酵素が抗ウイルスにどのように貢献しているかの詳細を紐解く予定である。さらに、異種菌由来のマイコウイルスがRNAiの鍵酵素(dcl1, dcl2 qde2)破壊株で安定的に感染ができるかどうか明らかにする。柱①でウイルス感染に応答する特徴的な遺伝子が見出された場合は、アカパンカビKO株をもちたウイルス感染への影響評価も検討する。
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Causes of Carryover |
当初、次世代シーケンサーによるRNA-seq解析を予定していたが、サンプル調整の遅れが生じた。さらに、委託予定の業者において解析用試薬の欠品(コロナ関連の影響)で受注の遅れが生じ、年度内のデータ解析と納品が難しいと判断された。そこで,RNA-seq解析の外注を次年度へ繰り越す形となった。繰り越し分については、積み残しサンプルのRNA-seq解析に充当する予定である。
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[Journal Article] A new tetra-segmented splipalmivirus with divided RdRP domains from Cryphonectria naterciae, a fungus found on chestnut and cork oak trees in Europe.2022
Author(s)
Sato, Y., Shahi, S., Telengech, P., Hisano, S., Cornejo, C., Rigling, D., Kondo, H. and Suzuki, N
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Journal Title
Virus Research
Volume: 307
Pages: 19860
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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[Journal Article] Assessment of mycoviral diversity in Pakistani fungal isolates revealed infection by 11 novel viruses of a single strain of Fusarium mangiferae.2021
Author(s)
Khan, H.A. , Shamsi, W. , Jamal, J., Javaied, M., Sadiq, M., Fatma, T., Ahmed, A., Arshad, M., Waseem, M., Babar, S., Dogar1, M.M., Virk, N., Janjua, H.A., Kondo, H., Suzuki N. and Bhatti, M.F.
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Journal Title
Journal of General Virology
Volume: 102
Pages: 169001
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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[Journal Article] Omnipresence of partitiviruses in rice aggregate sheath spot symptom-associated fungal strains isolated from paddies in Thailand2021
Author(s)
Neang S, Bincader S, Rangsuwan S, Keawmanee P, Rin S, Salaipeth L, Das S, Kondo, H., Suzuki N, Sato I, Takemoto D, Rattanakreetakul C, Pongpisutta R, Arakawa M and Chiba S.
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Journal Title
Viruses
Volume: 13
Pages: 2269
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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