2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
21K19092
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
伊藤 圭祐 静岡県立大学, 食品栄養科学部, 准教授 (40580460)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
寺田 祐子 静岡県立大学, 食品栄養科学部, 助教 (80767632)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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Keywords | コク味 / Calsium-sensing receptor / 甘味タンパク質 / リゾチーム / ソーマチン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、我々が発見したコク味受容体活性化タンパク質の作用機序解析を通じ、“コク味”の一部を科学的に解明することを目的とする。最近、「そのもの自体には味がないものの、好ましい基本味を増強する」“コク味”の受容体(Calsium-sensing receptor;CaSR)が特定され、CaSR の活性化を指標とした分子レベルでのコク味成分の探索・解析が可能となった。本研究では我々が見出した2つのタンパク質によるCaSR活性化メカニズムを解明する。これまでの研究で、リゾチームのアミノ酸配列を全網羅するペプチドライブラリーを合成し、CaSR応答を精査した結果、リゾチームよりも12倍高活性なorthosteric agonistとしてpeptide Lを見出した。本ペプチドにおいてリゾチームの分子表面に存在する各アミノ酸残基のAla置換によりCaSR応答が消失したことから、本ペプチドで構成されるリゾチーム領域がCaSRとの相互作用に重要である可能性が示唆された。またAla置換により、野生型ペプチドの2倍、リゾチームと比較して25倍高活性な改変型ペプチドLも取得された。リゾチームと同様にソーマチンについても解析した結果、より高活性なpositive allosteric modulatorとしてペプチドTを見出した。ソーマチンの分子表面クレフトを形成する本ペプチド領域がCaSRとの相互作用に重要である可能性が示唆された。さらに野生型ペプチドの2倍、ソーマチンと比較して3倍高い活性を示した改変型ペプチドTも取得できた。以上の結果より、リゾチームおよびソーマチンの両タンパク質において、CaSRを活性化する分子表面ペプチドを見出し、またさらに高活性な改変型ペプチドの創製に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナの影響により消耗品調達についての遅れはあったものの、全体としては当初の予定通りの進捗状況となっており、問題はない。
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Strategy for Future Research Activity |
高分子であるリゾチームやソーマチンがどのようにしてCaSRを活性化するのかは不明であり、その解明はタンパク質成分による食品のコク味を理解する上で有用な知見を与える。これまでの研究で我々は、リゾチームおよびソーマチンのアミノ酸配列を全てカバーするように網羅的に合成したペプチドライブラリーを精査することで、CaSR活性化領域の特定に成功した。次の課題は、リゾチームおよびソーマチン由来のペプチド(ペプチドL、ペプチドT)を構成する各アミノ酸残基の役割を明確にすることである。そのため、ペプチド合成装置を用いて各アミノ酸残基を20種類のアミノ酸残基に置換したライブラリーを別途合成し、CaSR活性化能を解析する。特にアミノ酸置換による活性化能の向上が顕著であったリゾチームの解析を中心として研究を進める。
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