2022 Fiscal Year Research-status Report
次世代DNAバーコーディングによる近縁生物混合試料の構成解析
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21K19103
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
陶山 佳久 東北大学, 農学研究科, 教授 (60282315)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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Keywords | 次世代DNAシーケンシング / MIG-seq法 / DNA品種識別 / 古代DNA / MPM-seq法 / 環境DNA |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、近縁な生物組織の混合試料の構成を明らかにする技術開発を実施している。その第一歩として、2021年度には1)加工食品における混入品種の識別技術開発を中心に実施したほか、2)古代遺跡の堆積土壌を対象とした古代植生解析のため試料採取に着手した。このうち、1)についてはすでに21年度までに開発した技術で一応の技術開発の目処がたったため、本年度(2022年度)は2)の課題に注力した。 古代遺跡の堆積土壌を対象とした古代植生解析として、奄美諸島の徳之島に所在する縄文時代の遺跡から堆積土壌を採取し、古代DNA分析用の試料として予備的な分析を試みた。まず、分析環境の整備として簡易クリーンルームを新たに構築し、現生サンプルとは物理的に隔離して古代DNA分析ができる環境を整えた。用いる手法としては、本研究代表者らが開発した次世代シーケンシング技術であるMultiplexed ISSR Genotyping by sequencing(MIG-seq)法(Suyama & Matsuki, 2015)と、そのコンビネーション技術であるMultiplexed phylogenetic marker sequencing(MPM-seq)法(Suyama et al. 2022)を応用した新規の手法を発案している。本年度の研究では、まずは予備的な分析として、MPM-seq法によって古代DNAの残存およびその分析の可否を確かめることとした。 予備分析の材料としては、徳之島における2ヶ所の縄文時代遺跡から採取した古代土壌試料とし、MPM-seq法によって複数の植物DNAバーコード領域を増幅させ、次世代DNAシーケンシングによってそれらの配列データを取得した。その結果、深さの浅い古代土壌試料の一部からは、徳之島に分布している植物に一致する配列が検出された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
挑戦的技術開発として計画していた古代DNA試料の分析について、具体的な予備分析実験による成果をあげることができ、その技術開発を進めることができた。古代土壌試料のほかに実施した森林土壌などの比較分析と合わせた結果から、新鮮な森林土壌試料および条件のよい古代土壌試料を対象とした植物環境DNA分析が可能であると確認できたが、抽出法や分析法に改善の余地があることも分かった。この予備分析に基づき、すでに新しい分析方法について着手している。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウイルス感染症による状況変化の影響が大きかったため、当初計画していた研究のうち、外部機関等との綿密なやりとりが必要な課題は見送ることとし、最も挑戦的な課題である古代DNA試料の分析について今後も注力することとした。さらに、古代DNA試料にとどまらず、そのほかの海水・河川水などの環境DNA試料を対象とした分析技術開発にも着手する予定である。これにより、より近縁な生物種群の混合試料であっても、その構成解析が可能になるような技術開発だけでなく、種内変異・遺伝的多様性解析を実現できる技術を開発する予定である。
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