2021 Fiscal Year Research-status Report
冷凍保存可能な花粉を活用した新奇ゲノム編集技術の開発
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21K19115
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
吉田 健太郎 京都大学, 農学研究科, 教授 (40570750)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石井 孝佳 鳥取大学, 乾燥地研究センター, 講師 (80823880)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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Keywords | 属間交雑 / ゲノム編集 / 染色体脱落 / パールミレット / 花粉 |
Outline of Annual Research Achievements |
パールミレットとパンコムギの属間交雑による遺伝子導入の実験を実施した。属間交雑によるコムギのゲノム編集技術はトウモロコシで開発された方法(Kelliher et al. 2019)に準拠する。パールミレット花粉にパーティクルガンで、蛍光タンパク質GFP遺伝子を導入し、花粉におけるGFPの発現効率を評価した。また、ゲノム編集に必要なRNP等を導入した花粉とそうでない花粉を選別するために、磁性ビーズと磁石を用いた手法について検討した。まず、磁石による選抜を可能にする有機溶媒について選定した。13種類の有機溶媒から花粉伸長能力を評価したところ、2種類の有機溶媒で花粉菅伸長が確認できた。乾燥した花粉よりも、新鮮な花粉を有機溶媒処理した実験で、花粉管伸長を顕著に多く観察することができた。パールミレットの安定形質転換体を作出するために、未熟胚のカルス化、再分化の培地条件を検討した。2,4-D濃度が2.0 mgL-1の培地では、安定的にカルスが増殖した。6-ベンジルアミノプリンを0.1 mgL-1含む培地で再分化が起こり、1個体が成長して出穂に至った。成熟種子からのカルス化条件についても、成熟種子から胚を取り出し、2,4-Dと6-ベンジルアミノプリンを含むスクロース3%のMS培地で培養することで安定的で良質なカルスを得ることができた。加えて、安定形質転換体の作出や属間交雑による遺伝子導入を促進するパールミレット変異体を選抜するために、自殖系統であるIPno’s 17956系統のパールミレット種子にEMS処理し、ガラス温室にて、M1系統を育成した。IPno’s 17956系統2000個体に重イオンビーム処理した変異体を作出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
花粉への遺伝子導入効率が低いため、花粉への遺伝子導入効率をあげなければ、花粉を介した効率的なゲノム編集ができない。現状、遺伝子導入効率が低いままであるため、本研究課題の進捗状況を遅れているとした。また、遺伝子を導入した花粉を選抜するために、磁力ビーズを利用する手法を検討したが、塊状になった磁力ビーズが花粉同士を接着させており、花粉の選別を妨げている。この問題を解決するには、磁性ビーズの種類や大きさ、非帯電の容器で選抜するなど検討する必要があり、そのため当初の予定より花粉の選別法の確立に時間がかかることが見込まれる。安定形質転換体の作出においては、パールミレットの再分化効率が低いことが課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、パールミレットとコムギの異種間交雑を利用したコムギのゲノム編集技術の確立を目指す。花粉孔を拡大することにより、DNA-coated magnetic nanoparticlesを導入効率を上昇され、トウモロコシの形質転換に成功したことが報告された(Wang et al. 2022)。パールミレット花粉での遺伝子導入効率をあげるため同様の手法を検討する。また、パールミレットの再分化効率をあげるため、コムギやトウモロコシ等で報告されている再分化効率を上昇する遺伝子を同時に導入し、パールミレットの再分化効率をあげることについても検証する。さらに、現在、自殖系統であるIPno’s 17956系統を中心に安定形質転換体の作成を試みているが、他の系統についても再分化効率などを検討する。さらに、パールミレットとパンコムギの交雑後の受精卵における染色体脱落効率をあげるために、EMS及び重イオンパールミレット変異体によるデジタルPCRやAmplicon sequencingを利用した染色体脱落を促進するMTL遺伝子変異体の選抜を計画する。
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