2022 Fiscal Year Research-status Report
冷凍保存可能な花粉を活用した新奇ゲノム編集技術の開発
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21K19115
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
吉田 健太郎 京都大学, 農学研究科, 教授 (40570750)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石井 孝佳 鳥取大学, 乾燥地研究センター, 准教授 (80823880)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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Keywords | 亜科間交雑 / 染色体脱落 / ゲノム編集 / 倍加半数体 / コムギ / パールミレット / 形質転換 / 花粉 |
Outline of Annual Research Achievements |
パールミレットは、多くの穂を作り、それぞの穂から大量の花粉を取ることができる。さらに、花粉は、乾燥・凍結耐性能をもち、-80度で保存することができる。また、ムギ類との亜科間交雑をした場合、パールミレットの染色体が選択的に脱落することから、ムギ類の倍加半数体を作成することも可能である。本研究では、パールミレットのこの特性を活かし、亜科間交雑による染色体脱落現象を利用した倍加半数体技術とゲノム編集技術を融合し形質転換体の作出が困難なコムギでゲノム編集を1世代で可能にする新しい技術を開発することを目的とする。本年度は、アグロバクテリウムを利用したパールミレットの安定形質転換技術の確立を試みた。MS培地におけるスクロース、カルス化を誘導する2,4-Dの濃度を調節することにより、未熟種子だけでなく、完熟種子からでも再分化能を持つ白いカルスを得ることができることを確認した。また、カルスへのアグロバクテリウム形質転換を試みた。緑色蛍光タンパク質GFP遺伝子の導入によって、カルスの一部にGFP蛍光を検出した。しかし、まだパールミレットの安定形質転換を作出するには至っていない。安定形質転換を用いずに、直接、花粉にゲノム編集に必要なタンパク質(CAS9)と核酸(gRNA)を導入する試験もした。まず、花粉の卵細胞へのデリバリー試薬を検討した。その結果、パールミレットの花粉は、有機溶媒や、リポフェクション試薬に耐性があり、試薬中に花粉管を伸長することができることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
パールミレットの完熟種子からの良質なカルスを得る培地条件を確立したものの、アグロバクテリウムを感染させたカルスより脱分化させ、形質転換個体を得るところまで至っていない。また、花粉へのゲノム編集に必要なCas9タンパク質とgRNAを導入するためのデリバリー試薬へのパールミレットの花粉耐性については確認したものの、実際にCas9とgRNAを導入することには成功していない。以上の理由によりやや遅れているとした。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究で、パールミレットの花粉がリポフェクション試薬に耐性があることを明らかにしたので、リポフェクション試薬によるgRNAと蛍光タンパク質(マーカー)の花粉管への導入試験を実施する。また、リポフェクション試薬によるgRNAの花粉管導入技術が確立されれば、Cas9タンパク質(ゲノム編集の際にgRNAを取り込み、標的DNAを切断する機能を持つ)を発現したパールミレット花粉を用意する必要がある。昨年度から引き続き、アグロバクテリウムによるパールミレットの形質転換技術の確立を目指す。そして、Cas9タンパク質を発現した形質転換パールミレットの作出に取り組む。
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