2021 Fiscal Year Research-status Report
Tracing the evolution of CAM-type photosynthesis: modification of carbon dioxide fixation of crops by genome editing
Project/Area Number |
21K19120
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
東江 栄 九州大学, 農学研究院, 教授 (50304879)
|
Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2024-03-31
|
Keywords | CAM / 概日リズム / ゲノム編集 / 光合成 / C3 / シスエレメント / DMS-seq |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,C3植物の光合成をCAM(ベンケイソウ型有機酸代謝)型に改変して極耐乾性及び耐塩性を持たせることを目的とする。CAM型植物は,夜に気孔を開き昼は気孔が閉じるため,耐乾性及び耐塩性が他の光合成型の植物より著しく高い。CAMの炭酸固定は時計遺伝子に制御され,光合成の鍵酵素が,他の光合成型とは逆に夜に発現する。本研究では,C3植物がもつCAM関連遺伝子のシスエレメントを特定し,ゲノム編集技術を用いて関連遺伝子を時計遺伝子の制御下におくことを最終目標とする。 C3植物の葉身におけるCAM型光合成関連遺伝子の1日の発現量を,RNA-seq及びリアルタイムPCRで調べ,CAM植物のCAM型光合成遺伝子の発現パターンとの比較から,改変すべき遺伝子と発現の時間帯を明確にする。これらの遺伝子のシスエレメントを特定するために,転写開始点上流の転写因子結合部位を,転写因子データベースを用いて推定する。推定された転写因子の機能する時間帯を,概日時計遺伝子発現データベースで調べ,昼に発現を誘導している転写因子を特定する。さらに,この結果の正否を,転写因子結合部位の塩基配列から転写因子を特定するDMS-seq法で確認する。 C3植物に付与する配列は,RNA-seqの発現解析の結果と,既知の時計遺伝子の発現パターンから夜に発現する遺伝子を選定する。上述したデータベースとDMS-seq解析で,その遺伝子の発現を制御するシスエレメントと転写因子を特定する。 選定した配列の機能の確認には,一過的発現解析を行なう。上記の解析結果に基づいて編集したDNA断片とレポーター遺伝子を連結したベクターを作出し,これをアグロインフィルトレーション法で葉身に導入し,発現する時間帯を確認する。目的の時間に発現することを確認したDNA断片の塩基配列を基に,C3植物のゲノムをCRSPR/Cas9システムを用いて編集する。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
イネアノテーションデータベースRAP-DBを用い、アミノ酸配列の相同性を基にCAM型光合成関連遺伝子として、OsβCA2, OsPPC2a, 及びOsPPCK3,他8種を選定した。これらの発現日変化パターンをRiceXProから入手し、アイスプラントと比較した。その結果、4種の遺伝子の発現パターンが、アイスプラントの相同遺伝子と逆の位相を示すことが明らかとなった。これらの遺伝子の転写調節因子結合部位を、DNase I高感受性領域(DHSs)データベースPlantDHSを用いて推定し、結合する転写調節因子をNewPLACEで推定した。その結果、OsβCA2, OsPPC2a, OsPPCK3, OsPCKの発現の制御に関わるシス因子の候補としてそれぞれ15種類, 19種類, 14種類, 24種類を見出した。 シロイヌナズナはPEPCキナーゼ(AtPPCK1)の転写開始点5´上流2000 bpを対象に、DMS-PCR法とPlantDHSによってシス因子を推定し、転写調節因子の結合コンセンサス配列データベースJASPARの情報を基に9種類のトランス因子を同定し、1日の遺伝子発現プロファイリングデータベースDirnalの情報を基に3種に絞った。 CAM植物アイスプラントではPEPC(Mcppc1)及びPECキナーゼ(McPpck1)を対象に、シロイヌナズナと同様な手法で、シス因子及び転写調節因子を推定した。その結果、いずれもシス因子の存在する領域とその数および候補転写調節因子を推定した。 このように、C3植物における改変すべき遺伝子、及びその発現制御に関わるシスエレメント及び転写調節因子を推定することができたことから、ほぼ予定通り進捗していると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
シロイヌナズナは、PEPCキナーゼのみ解析を行った。それ以外のCAM鍵酵素(カーボニックアンヒドラーゼ、PEPC、NAD-リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、リンゴ酸トランスポーター、NADP-リンゴ酸酵素、ピルビン酸カルボキシキナーゼ、ピルビン酸リン酸ジキナーゼ等)に関して同様な解析を進める。PEPCキナーゼ遺伝子については、ゲルシフト法によってシスエレメントの機能を確認する。特定の時間に核タンパク質を単離し、シスエレメント配列を含むDNAとの結合を確認する。また特定した配列の機能を確認するために,一過的発現解析を行なう。具体的には、シスエレメント配列を一部改変したDNA断片にレポーター遺伝子を連結したベクターを作出し、これをアグロインフィルトレーション法で葉身に導入し,発現する時間帯を確認する。 イネについては、特定した転写調節因子結合部位をDMS法で確認し、塩基配列から転写調節因子を推定する。まずPEPC及びPPCKについて検討する。シスエレメントの特定後、シロイヌナズナと同様にゲルシフト法によって、シス配列への核タンパク質の結合を確認する。またシロイヌナズナに適用した手法を用いて一過的発現解析を行う。 アイスプラントでは、PEPC(Mcppc1)及びPECキナーゼ(McPpck1)のシス因子及び候補転写調節因子を推定した。イネ及びシロイヌナズナで検討するこれらの遺伝子以外の遺伝子についても同様な解析を行う。アイスプラントでは、イネ及びシロイヌナズナのように、DHSに関する情報がない。DMS法で得られた結果の裏付けとして、PCR及び次世代シーケンサーを用いてCAM型光合成関連酵素遺伝子のDHSの塩基配列情報を取得する。上述した二種植物のように、ゲルシフト法による核タンパク質のシスエレメントへの結合及び一過的発現解析によるプロモーター解析を行う。
|
Research Products
(13 results)