2021 Fiscal Year Research-status Report
Biochemical and genetic studies on mesoderm differentiation in insects using silkworm mutants and their application to development of insect growth regulators
Project/Area Number |
21K19124
|
Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
嶋田 透 学習院大学, 理学部, 教授 (20202111)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
李 允求 学習院大学, 理学部, 助教 (50847168)
|
Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2024-03-31
|
Keywords | 中胚葉 / 鱗翅目昆虫 / メタボローム / リピドミクス / RNA-seq |
Outline of Annual Research Achievements |
カイコの変異体「腎臓形卵」ki変異体のホモ接合の母蛾が産む卵は、外観が歪んでおり、胚発生の途中で中胚葉組織が形成されずに致死するという大変興味深い表現型を示す。研究代表者らは、ポジショナルクローニングにより、ki形質の原因が、新奇なペルオキシダーゼをコードする遺伝子の欠損であることが明らかにしてきた。原因遺伝子の特徴から、コードするタンパク質は脂質合成を触媒する酵素であると予想された。そこで、今年度は腎臓形卵形質の原因解明のために、ki変異体(ki/ki)および正常蚕(ki/+)のそれぞれ蛹期の卵巣を経時的にサンプリングし、メタボローム解析(リピドーム解析)を行なった。ノンバイアスリピドーム解析を含むリピドーム解析を実施し、脂質を網羅的に解析したが、結果として量的有意差を示す化合物を一つも見出すことができなかった。 ki形質の原因遺伝子であるペルオキシダーゼをクエリーとして、ヒトをはじめとする動物ゲノムにコードされるタンパク質に対して再び相同性検索を行なった結果、相同性を示すペルオキシダーゼが多数あり、オーソロジーは不明瞭であった。すなわち、kiの原因遺伝子は、機能の知られていないタンパク質をコードしている。上記のリピドーム解析の結果と合わせて考察すると、kiの原因遺伝子がコードするタンパク質は、当初予想したように脂質の合成・代謝を支配するとは限らず、想定外の機能を含めて、より広く可能性を探る必要があることが明らかになった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
ki形質の原因遺伝子がコードするタンパク質は、その配列上の特徴と相同性から、脂質の合成・代謝に関わる酵素であろうと予想していたが、実験の結果、否定的なデータが得られた。したがって、今後は、より幅広く活性を検討する必要がある。いずれにしても、この遺伝子は、昆虫の胚葉分化という基本的なメカニズムを担っているにもかかわらず、それが既知の酵素をコードするのではなく、まったく新規な分子機構を介して胚葉分化に関与している可能性が浮上してきた。これから新規な発見につながることが期待される。
|
Strategy for Future Research Activity |
卵巣のメタボローム解析は対象を広げて継続する。kiの原因遺伝子がコードするペルオキシダーゼ様タンパク質を、組換えタンパク質として大量発現させ、酵素活性を検討する。また、培養細胞を用いて遺伝子機能の解析を行う。さらに、エリサンやイチジクカサンなどカイコに近縁の昆虫で、オーソログ遺伝子をノックアウトしてカイコと同じ表現系が得られるかどうかを調べる実験を行う。これら新規な実験を組み合わせて、遺伝子機能を明らかにする。
|
Research Products
(1 results)