2021 Fiscal Year Research-status Report
Development of a novel artificial tooth and bone material consist of cellulose nanocrystal and hydroxyapatite.
Project/Area Number |
21K19132
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
有田 稔彦 東北大学, 多元物質科学研究所, 助教 (50423033)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
増原 陽人 山形大学, 大学院理工学研究科, 教授 (30375167)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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Keywords | 歯科修復材料 / セルロースナノ結晶 / ハイドロキシアパタイト / キトサン / 歯牙骨材料 |
Outline of Annual Research Achievements |
高強度・高い審美性・高い生体適合性を有し、安価かつ一回施術のみで歯と融合可能な新規歯科修復材料の開発を目指す。 現在歯科治療の一つであるう蝕治療に使用されるインレーには、主にメタル・セラミック・レジンが広く用いられている。しかしながら、これら材料には利点・欠点が存在する。メタルインレーは、審美性に欠け、金属アレルギーの発症が懸念される。その一方で、セラミックインレーは、審美性に長けているが、その強度が不十分であり奥歯などの負荷のかかりやすい部位には使用できない。レジンインレーも同様に審美性長けているが、に欠損・剥離しやすいほか、残存モノマーの体内へ溶出が懸念される。また、治療面では、施術回数及び着用後の定期検診により、歯科医と患者の双方に負担が生じてしまう。これら課題を一挙に解決するためには、①高強度、②高い審美性、③生体適合性、④安価かつ一回施術のみで歯と融合するような条件を満たす理想的な歯科修復材料の開発が急務である。 これら課題解決に向け、本申請研究では、セルロースナノ結晶(CNC)とハイドロキシアパタイト(HAp)を複合化することで、上記①-④の条件を満たす新規歯科修復材料(CNC@HAp)を開発する。CNCは、植物繊維や再生繊維に含まれるセルロースから作製されるセルロース加工品であり、高機械的強度、無毒性等の特性を有する。HApは、歯に含まれるエナメル質の主成分であり、その特性として、再石灰化による強固な歯牙融合性を有する。最終的には、治療時のCNC@HApの溶出を防ぐため、生分解性高分子であるキトサン(CS)と複合化することで、疎水性を付与した複合材料(CNC@HAp/CS)を開発する。 本研究の達成により、従来の複合材料では未踏であった、理想的な歯科修復材料が開発でき、歯科治療分野における革新的な発展をもたらすと確信している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
<CNC表面のリン酸エステル化によるHAp被覆量増大と複合材料の高強度化> CNC表面をリン酸エステル化したCNC (P-CNC) を作製後、P-CNC表面のリン酸基にHApを析出・複合化することで、従来のCNC@HApを凌駕する機械的強度を有した歯科修復材料用フィラー (P-CNC@HAp) の作製に成功した。P-CNCは、EDX等の測定により、CNC表面へのリン酸基の導入を確認した。また、ペレット状に成型した各サンプルの圧縮試験を行い、HAp:10.7 MPa、P-CNC:48.7 MPa、CNC@HAp: 42.6 MPa、P-CNC@HAp:55.3 MPaの結果を得た。圧縮試験の結果から、CNCへのリン酸エステル化によるP-CNC@HApの機械的強度の向上を明らかにした。 <再石灰化時におけるのP-CNC@HAp複合体の溶出を防ぐ、疎水性複合材料の創生> 作製したP-CNC@HAp表面に生分解性高分子であるキトサン(CS)を被覆することで、疎水性が付与された新規歯科修復材料を開発した。酸性水溶液中で、生分解性天然高分子であるCS を溶解させ、高粘度溶液を作製した。作製した高粘度溶液内に、P-CNC@HApを加え、攪拌することで、P-CNC@HAp表面をCSで被覆したP-CNC@HAp/CSを作製した。 P-CNC@HAp/CSは、EDX測定により表面にキトサン由来のN元素を確認した。また、接触角試験の結果より、キトサンを複合化したことで、疎水性が向上したことを確認した。 作製したP-CNC@HAp/CSは人工唾液に浸漬し、SEM/EDX測定にて、経時変化に伴う形態評価を行なった。経過時間に伴い、SEM画像からは、HAp結晶の析出が確認でき、EDX測定からHAp由来のP元素及びCa元素の元素濃度の増加を確認した。以上、本材料が高い再石灰化能力を有することを明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
<スラリー状CNCの検討> これまで、粉末CNCによるサンプル作製を試みていたが、CNCは、乾燥による凝集が顕著であり、本材料の特性への影響が懸念されるだけでなく、リン酸エステル化の過程が無しでは、高機械的強度及びHAp被覆量の増大が見込めない。これは、製品化の場合、コストの増大が予想され、目的の一つである安価な作製条件を満たすことができない。そこで、良分散かつ粒径の小さいスラリー状CNC(CNC_s)を選定することにより、リン酸エステル化無しで、CNC_s@HAp/CSの作製手法を確立させ、CNC表面へのHAp被覆量を増大及び高機械的強度を達成する。 具体的には、これまでのと同様な作製手順によりCNC_s@HAp/CSを作製し、P-CNC@HAp/CSと同程度以上の特性を有する材料の作製を目指す。 <歯との融合過程の評価> 本材料の実用化には、生分解性高分子の分解速度と、再石灰化速度の制御が必須であるため、人工唾液を調整し、再石灰化の速度評価を行う。さらに、治療の短期間化を目指し、口内での再石灰化の促進及び硬化方法の確立を図る。 具体的には、作製したサンプル中のエナメル質(HAp)内部構造のSEM観察・EPMA測定や、Contact Micro Radiogram (CMR)による定量的な再石灰化を評価する。ここでは、得られたCMR像から画像解析を行い、総ミネラル数の増減を求める。さらに、波長分散型X線分析により、Ca元素及びP元素の分布を確認する。また、人工唾液中で再石灰下を促進させるため、より唾液に近い人工唾液を調整する。最終的には、擬歯と本材料が人工唾液中及び口内に似た環境での接着性の確認を目的とし、擬歯と本材料の接着を試み、人工唾液中及び口腔内に類似した環境における接着性を評価する。これにより、本申請研究が、歯科修復材料として有効であることを明らかにする。
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