2021 Fiscal Year Research-status Report
New interpretation of trees' strategies on the water conduction
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21K19147
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
黒田 慶子 神戸大学, 農学研究科, 教授 (20353675)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
東 若菜 神戸大学, 農学研究科, 助教 (20780761)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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Keywords | 水分通導 / アコースティックエミッション / エンボリズム / キャビテーション / 熱流束計 / 広葉樹 / AE |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、樹幹における通水停止と通水回復過程において、樹体内で起こっている現象を生理学および解剖学的手法によって解明することである。本年度は、①エンボリズムによる通水停止、②通水組織へ水(木部樹液)の再流入および通水の再開について、生立木における非破壊的な計測を行った。 通水停止と回復の日変化および長期変動、季節的・環境的な違いについては、Acoustic Emission法(AE法)および熱流束計、樹液流速計の値から明らかにできた。シマトネリコやクスノキの樹幹では、日照のある時間帯に継続してAEの発生が記録された。日照によって蒸散量が増えて樹液流速度が増加する。そのため、樹液にかかる張力(tension)の増加によってエンボリズムが発生しやすく、通導組織の排水が頻繁に起こったと推察した。AE数と同様に、熱流束の値(樹幹外から内方への熱の移動)は日照と共に増加が認められた。つまり、日中に外気温が上昇しても、樹幹内には低温の地中の水が上昇することにより、樹幹外から内方への熱移動の値が大きくなったと言える。曇天の日に瞬間的な日照があった時間帯に、AE数と熱流束の値が増大する現象を確認した。また、夜間に大気飽差の値が瞬間的に上昇した際にもAE発生が認められ、夜間にも蒸散が起こって木部樹液が動くことがあるという新たな知見を得た。このような傾向は、6-10月の計測期間を通して確認され、日中の気温が高い夏季の期間では特に明瞭に確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
AEセンサー、樹液流速、熱流束計などの計測機器を使用し、樹幹内の通水停止と再開のデータを非破壊的に得ることができた。そのデータと解剖所見とのつき合わせを行い、1年目の研究の目標をほぼ達成することが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
水分供給不足で木部に排水部(空洞)が発生した後、生細胞から隣接する通水組織へと給水する仕組みについて、解剖学的手法で検証する。通水停止および回復の難易について、樹種による細胞種(生細胞、小道管)の構成割合と配置、通水回復機能の高低との関係から明らかにする。
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Causes of Carryover |
本年度は、コロナウイルス蔓延の状況から移動が制限された。そのため、学会参加や試料採取の出張が充分に出来なかった。また、類似分野の研究者と共にセミナーを開催することができなかった。それに伴い、実験補助の雇用も行わなかった。
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