2023 Fiscal Year Annual Research Report
New interpretation of trees' strategies on the water conduction
Project/Area Number |
21K19147
|
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
黒田 慶子 神戸大学, 農学研究科, 非常勤講師 (20353675)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
東 若菜 神戸大学, 農学研究科, 助教 (20780761)
|
Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2024-03-31
|
Keywords | 通水阻害 / エンボリズム / アコースティックエミッション / AE / 通水回復 / オリーブ / シマトネリコ / アセビ |
Outline of Annual Research Achievements |
1)樹木の通水阻害(エンボリズム)の発生様態・要因の解明:オリーブ苗木とシマトネリコ植栽木を用いて, AE 法(アコースティックエミッション法)による通水阻害および熱流束法による樹液流速度の非破壊計測を屋外で8 か月行った。オリーブの苗木で潅水制限を行った結果,AE 発生数が顕著に増加し,土壌の水ストレスの上昇に対する通水阻害の発生が示唆された。シマトネリコの6 か月間のAE データを環境データと合わせて比較し,統計解析を行った。GLM 解析の結果,通水阻害の発生要因として風速,気温,VPD の増加および湿度の低下がAE 発生数の増加に有意に寄与する結果が得られた。またAE 発生数の月変動の結果とCCF 解析の結果から,気温が低下する9 月以降において,AE 発生数の日周期性が失われることが分かった。この結果は,環境変化による生理応答の低下のために通水阻害の発生が抑制できなかった可能性を示唆する。 2)通水阻害後の通水回復に寄与する組織の解明:アセビの切り枝を採取し一晩飽水させたのちに,葉の蒸散による乾燥処理を行って,人為的に試料に通水阻害を発生させた。乾燥時間0h,1h,24hで比較すると,乾燥時間の増加に伴いAE発生数が増加するとともに,含水率が低下した。その後,各試料の葉を除去してワセリンを塗布することで,「道管内に,蒸散による張力が働いていない」,つまり夜間の通水回復の要因とされる状態を再現した。酸性フクシン水溶液(色素液)を吸水させた後,液体窒素にて道管内の水の分布を固定し,真空凍結乾燥の後に色素液の定着した細胞を観察した。色素液は乾燥時間が長い試料ほど幹の高い位置まで吸水された。また,色素液はどの高さでも,早材部の導管と木部繊維の壁孔で観察され,放射柔組織では観察されなかったことから,アセビについては,通水回復時における木部繊維を介した水の移動が示唆された。
|