2021 Fiscal Year Research-status Report
珪藻を活用した組換え遺伝子高発現システムの創成~珪藻による有用物質生産を目指して
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21K19149
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
足立 真佐雄 高知大学, 教育研究部自然科学系農学部門, 教授 (70274363)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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Keywords | 形質転換 / 珪藻 / ターミネーター / 有用物質生産 |
Outline of Annual Research Achievements |
海産珪藻の1種Phaeodactylum tricornutumは増殖速度が速く形質転換法が確立しているため、これを用いた有用物質の生産が期待されている。この有用物質の高生産には遺伝子発現量の制御が重要であり、遺伝子を高発現させる高活性なプロモーターとターミネーターの選択が重要となる。Kadono et al. (2021)は、珪藻に感染するウイルスの1種であるCsetDNAVのゲノムDNA上に存在する機能未知遺伝子(VP4)の上流から、導入遺伝子を高発現させるプロモーターCsetP4を発見した。しかし、本高発現型プロモーターと同時に用いるターミネーターについて、如何なるターミネーターが導入遺伝子を高発現させるか未検討である。そこで本研究は、珪藻内在性の2種のターミネーター(PtfcpA ter., Cffcp ter.)と、上述した珪藻ウイルス由来のCsetT4の計3種のターミネーターを用いて、CsetP4と共に導入遺伝子を高発現させるターミネーターの組み合わせを明らかにすることを目的とした。まず、3種のターミネーターをそれぞれ組み込んだベクターを、P. tricornutumに導入することにより得られたコロニーを、ゲノミックPCRに供した結果、計57個の形質転換体が得られた。これらのegfp由来の蛍光量ならびにmRNA量を測定・比較した結果、P. tricornutumの内在性ターミネーターPtfcpA ter.は、国内外で使用されているCffcp ter.よりも高い活性を示した。以上の結果より、高発現型プロモーターであるCsetP4と同時に用いるターミネーターの種類を変えることにより、導入遺伝子の発現量は変わり得ること、中でもPtfcpA ter.との組み合わせが導入遺伝子を最も高発現させることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
2021年度は、珪藻のターミネーターに注目し、複数の珪藻自身あるいは珪藻ウイルスゲノムから、それぞれターミネーターを単離し、これらのターミネーターの活性を評価した上で、最も導入遺伝子の高発現をもたらすターミネーターを選抜しようとした。この目標に対して、珪藻自身が保有するターミネーターPtfcpA ter.が高い導入遺伝子転写誘導活性を持つことを明らかにしたことから、当初の計画以上に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度も引き続き珪藻のターミネーターに注目し、複数の珪藻自身あるいは珪藻ウイルスゲノムから、それぞれターミネーターを単離し、これらのターミネーターの活性を評価した上で、最も導入遺伝子の高発現をもたらすターミネーターを選抜する。これにより構築した導入遺伝子の高発現システムの有用性を評価するために、本法による海産珪藻を用いた有用物質の高生産が可能か検討する。具体的には、有用物質生産に関わる遺伝子の下流に高発現型ターミネーターを連結し、高発現型プロモーターと共にベクターに組み込む。これにより作成した形質転換ベクターを用いて、海産珪藻P. tricornutumに形質転換させる。これにより得られた形質転換体を用いて、その有用物資産生能を評価する。
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