2021 Fiscal Year Research-status Report
Development of production technology to connect sex selection of sperm by cell biological action to mass production
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21K19197
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
山下 健一 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 副研究センター長 (90358250)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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Keywords | 生産技術 / 繁殖 / 家畜 / 性判別 / 家畜繁殖用精液 |
Outline of Annual Research Achievements |
家畜の牛の繁殖において、「性選別」の実現は生産性向上の切り札であり、実際に、X精子とY精子のわずかなDNA量の違いを蛍光染色で読み取り選別した繁殖用精液が広く用いられており、畜産統計における雌雄割合の差という形でも表れている。 一方、学術的には近年、遺伝子発現の制御に関する研究が進んでおり、この中でX精子とY精子の遺伝子発現の違いも報告されており、本研究は、こちらに着目したものである。これを応用した性選別技術も報告されるようになってきている中、普及につなげられるかどうかは、繁殖用精液としての量産技術と併せて開発できるかどうかにかかっている。 つまり本研究は、性選別技術そのものというよりは、量産性に重点を置いた繁殖用「性選別精液」の生産技術にかかるものである。生産プロセスの開発にあたって、最重要ポイントは、X/Y精子分離の正確さより処理量(処理精子数)であり、化学工学のスケールアップの基本である相似則に、特定の無次元数の重み付けを下げるなどの工夫をしながら、X/Y選別の「ほどほどの」精度と処理量のバランスを図っている。 この研究は、研究代表者が中心となって開発してきた、流体技術を用いた運動性精子選別技術を出発点とし、これにスケールアップの考え方を適用するという進め方である。特に、単に動いているかどうかだけではなく、運動速度や泳ぎ方ごとに選別することができる性能を活用しているため、X精子・Y精子いずれかだけを対象として運動性を下げたり上げたりしつつ、運動性精子選別技術を適用している。すなわち、本研究での検討を一言で整理すると、この運動性の選択的調節と、運動性精子総捕集量のバランスを取りながらのスケールアップという、多変数同時探索型スケールアップと言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2年計画のうち1年目を終えたところであるが、1年目は計画に従って凍結精液を対象としたラボ実験を進めた。研究実施計画では、「検討①」「検討②」と称して、2つに大別した計画を示し、最終的にこの2つを統合活用することとしていた。「検討①」とは、射出精子が雌性生殖路内で様々な生化学的な反応(先体反応)や運動性の増進(超活性化)を経て、受精可能な状態へと変化していく「受精能獲得」という現象を参考に、時間ごとに運動能力の高い精子を捕集することによりX/Y比を変えようというものであった。「検討②」とは、この方法単独では、安定した性の偏りが得られないという問題が残るので、精子の運動(分子モーター)に必要なエネルギーを産生する回路を阻害したり、または促進するような候補薬剤の添加を行うことで、X精子とY精子の運動能力に差をつけ、独自の捕集技術へ導入することで、性選別技術しようとするものであった。そして、②の検討を①に統合する進め方とすることとしていた。 つまり、1年目においては、検討②を中心に進めたが、リアルタイムPCR法を用いてX精子/Y精子の比の偏りを確認でき始めていることから、上記のような区分とした。 なお、X精子(つまり雌)に対象を絞った実験を進めているが、これは、現実的な社会ニーズに従ったものである。
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Strategy for Future Research Activity |
研究実施計画の2年目に従って進める。薬品の添加による運動性の調節に関する検討、使用する試薬類の濃度、精液のインキュベーション時間や温度、そしてマイクロ流体デバイスを使用する上での送液条件など、個別具体的な実験内容は1年目と同じであるが、「検討①」を併用した検討が加わってくること、ならびに処理量の増大が2年目のポイントとなる。体外受精による評価を必要に応じて行い、精子段階でのX/Y比と、胚としての性比の違いなどの評価を加える推進方策とする。
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Causes of Carryover |
消耗品のうち、培養液を中心とした輸入が必要なものの納期が以前より長期化しており、部分的に発注を2年目に持ち越したことが主な原因である。2年目の中期頃までに消耗品など物品の調達を完了する予定であり、2年計画という研究期間全体としては、影響は生じていない。
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