2022 Fiscal Year Annual Research Report
エピジェネティック変異の多様性増大を介した環境適応機構の探索
Project/Area Number |
21K19199
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
村上 洋太 北海道大学, 理学研究院, 教授 (20260622)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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Keywords | ヘテロクロマチン / 環境適応 / 多様性 |
Outline of Annual Research Achievements |
真核細胞のクロマチン構造には凝集した構造をもち遺伝子発現を抑制するヘテロクロマチンと弛緩した構造で遺伝子発現が可能なユークロマチンの2種類が存在する。ヘテロクロマチンはセントロメアやテロメアに恒常的に存在しヒストンH3のLys9のメチル化修飾(H3K9me)で規定される。加えて、ユークロマチン上に異所的なヘテロクロマチン(ectopic heterochromatin: EHC)が一時的に形成され遺伝子発現抑制を行う場合がある。申請者自身のものを含むモデル生物の分裂酵母を用いた最近の解析からEHCの分布に多様性が存在し、EHCによる遺伝子発現抑制(エピジェネティック変異)が環境適応に寄与するとの仮説を持った。本研究では分裂酵母を用いて上記仮説の検証をおこなう。具体的に1) ストレス環境でのEHC多様性の増大、2) EHC多様性増大による適応度の増大、3) EHC多様性増大による適応の“記憶” 、について検討することを目的とした。 1) 1についてはすでに、いくつかの論文で同様の実験がおこなわれており、低温ストレスや窒素源枯渇での変化は報告されている。そこで、変化が見られた領域でのH3K9meの変化をChIP-qPCRで検討し、実際にそのような変化をおこることを確認した。 2)ではEHCの出現をコントロールするために、H3K9メチル化酵素の発現量を調節できる系を作成し、実際にClr4の発現の上昇によりEHCの出現が増えることをカフェイン耐性、アデニン要求性の表現型ベースで確認した。さらにカフェイン耐性、アデニン要求性を示す株についてその耐性に寄与する遺伝子上にヘテロクロマチンが形成されて居ること、さらにClr4の発現を抑制するとヘテロクロマチンの消失とともに表現型が元に戻ることを確認し、実際に表現型の変化がEHCの変化によることを明らかにした。
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