2022 Fiscal Year Research-status Report
Studies on cell-by-cell color variation of hydrangea
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21K19216
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
吉田 久美 名古屋大学, 情報学研究科, 教授 (90210690)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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Keywords | アジサイ / アジサイ青色錯体 / アルミニウム / キナ酸エステル / デルフィニジン3-グルコシド |
Outline of Annual Research Achievements |
一般にアジサイの園芸品種には青色品種と赤色品種の区別があるとされ、青色品種を中性土壌で栽培しても赤色ではなく紫色までしか色は変化しない。また、赤色品種でも同様で、酸性土壌で栽培しても青色は呈さず、紫色のガク片になる。さらに、紫色のアジサイは、着色細胞が青、紫、赤色のモザイク状で、当研究室でそれぞれの色を細胞成分の分析が行われた結果、発色にはアルミイウムイオン(Al3+)と5-アシル化キナ酸(5CQ, 5pCQ)のデルフィニジン3-グルコシド(Dp3G)に対する当量比が影響することが明らかになった。 ところが、加茂花鳥園で育種されたアジサイ品種「ごきげんよう」は同一品種で栽培条件の違いによって美しい青色と赤色とが発色する珍しい品種である。そこで、このアジサイのガク片の違いによる有機・機成分の違いを分析することで、発色の違いを解明しようと考えた。当初は、ガク片をプロトプラスト化して有機成分と無機成分を分析しようと計画したが、適当なプロトプラスト化の条件を見いだすことができなかったため、ガク片全体での分析を実施した。 ごきげんようでは、青色に発色させた時の方がアントシアニン量がガク片の新鮮重量あたりでは3倍程度高かった。その結果、5アシル化キナ酸量(5CQ 2と5pCQ 3の合計量)が新鮮重量あたりの絶対量では青色と赤色で同程度であったものの、Dp3Gに対する当量で計算すると青色で低い結果となった。ガク片のMSイメージングより、Dp3GとAl3+は二層目の着色細胞だけに、助色素は表層と二層目の着色細胞に局在する。ごきげんようでも同様の分布を仮定すれば、Dp3Gに対するAlの当量は約6当量と、試験管内での色再現実験からも、十分に青色が発色する条件を満たす。ごきげんようの発色の違いは、栽培条件によるAl量の違いだけに起因することがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度の採択決定がアジサイの開花時期後であり遅れた。さらに、これまでのアジサイ品種のガク片のプロトプラスト化条件では、ごきげんようのガク片のプロトプラスト化ができず、各種条件検討を実施したが、今年度は分析に可能な量の細胞の確保ができなかったため、単一細胞での分析が実施できず、ガク片の分析を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
ごきげんようの開花ステージ別のRNAの調製を行い、色素、助色素、これまでに申請者らが見いだしたアジサイのアルミニウム輸送体候補遺伝子、および、色素と助色素の生合成遺伝子の発現解析を実施し、同一品種が栽培条件の違いによりアルミニウムイオンと色素量の異なる背景を遺伝子の面から探る。
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Causes of Carryover |
プロトプラスト化が予定どおり進まなかったため、その分析にかかる費用として計上した予算が執行できなかった。 今年度は、遺伝子解析を進める予定であり、その費用として使用する。
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Research Products
(8 results)