2021 Fiscal Year Research-status Report
Search for a pioneer polymerase complex that opens chromatin in non-coding RNA transcribed regions
Project/Area Number |
21K19235
|
Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
廣田 耕志 東京都立大学, 理学研究科, 教授 (00342840)
|
Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2023-03-31
|
Keywords | 非コードRNA / 組換え / クロマチン / 分裂酵母 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒトでは全ゲノムの約2%を蛋白質コード領域が占めているが、ヒトゲノムの70%以上から蛋白質をコードしない非コードRNAとして転写されている。非コードRNAの中には、サイレンシング、転写活性化などの遺伝子発現の各段階に影響を与える分子が知られているとともに、非コードRNA発現領域と減数分裂期組換え部位の相関が指摘されるなど、非コードRNA転写と染色体機能調節の関係性が議論されている。 これまでの研究で、非コードRNA分子自体が蛋白質を標的遺伝子座に動員する際のガイドRNAとして機能したり、転写制御因子に直接相互作用し機能調節したりするなど、個別の分子自体の機能の解析が進められているが、機能が解明されている分子は非コードRNA分子の中のごく一部である。本研究では、非コードRNA自身の機能ではなく,転写するポリメラーゼの通過に伴う染色体機能制御の可能性を示唆するパイオニアポリメラーゼ仮説「非コードRNAを転写するポリメラーゼがパイオニアとしてその通過領域のクロマチン構造を緩め、転写や組換えなどのDNAを基質とする反応の制御に寄与する」を立証しメカニズムを解明する。この機構は転写物の配列に依存しない普遍的な機構である点で新規のメカニズムであると言える。 2021年度には、申請者が独自に発見した分裂酵母のfbp1遺伝子座に見られる、mlonRNA(metabolic stress induced long ncRNA)と同じ配列を持つ転写ユニットから同様の遺伝子間領域を転写する非コードRNAを発見し、この部位に減数分裂期組換えホットスポットが出現することを同定した。このことから、非コードRNAを転写しつつゲノム上を移行するパイオニアポリメラーゼにより、通過領域のクロマチンが開いた構造となり、近傍遺伝子の転写のみならず、その領域の組換え反応も活性化されることが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度までに分裂酵母fbp1遺伝子において申請者が発見したmlonRNAの転写開始配列mlonBOXのコンセンサス配列を決定し、この配列と減数分裂期の相同組換え部位(Spo11(分裂酵母ではRec12)結合オリゴDNA)の配列との相関を調べ、SPBC24C6.09c上流領域からmlonRNA転写がストレス時特異的に誘導され、このストレスに依存した非コードRNA転写に伴って減数分裂期DNA2本鎖切断が誘導されることを発見した。 この発見で、外部環境変化により配偶子の遺伝的多様性が影響を受ける可能性を見出している(未発表)。mlonRNA転写による組換え活性化の分子機構の解明のためmlonBOXを減数分裂期組み換え部位として知られる、ade6-M26遺伝子座に挿入すると、このmlonBOX配列依存的に非コードRNA転写と組換えが同時に活性化され、組換え領域には開いたクロマチン構造が誘導されることも発見している。このことから、mlonRNA転写に沿って転写領域のクロマチンが開いた構造に変化し、その結果転写のみならず組み換え反応にかかわるタンパク質のDNAヘの接近性が増加することで、組み換え反応が上昇している可能性を指摘した。 この結果は、ade6-M26のmlonBOX挿入細胞と対照細胞で比較した際に、histoneH3の結合量が減数分裂期にmlonBOX挿入細胞でのみ大幅に低下していることとも一致した。これらの一連の発見により、(1)非コードRNA転写、(2)転写装置の移行に沿ったクロマチン再編成、(3)転写や組み換えといったDNAを反応場とした反応の活性化というスキームを描くことに成功した。一方、生化学的mlonRNAポリメラーゼ複合体の同定は未だ成功に至っていない。生化学研究の遅延と、遺伝学的研究の大幅な進展をあわせ、「概ね順調」と評価している。
|
Strategy for Future Research Activity |
前述のこれまでの研究から、非コードRNA分子ではなく、非コードRNAを転写する装置が移行することでその移行領域のクロマチンを開いた構造に変化させ、その領域での転写・組み換え反応を促進することが示唆できたが、異なる配列を有する様々な非コードRNA分子が、その領域で機能し、クロマチン再編成をする可能性が残っている。 この可能性の検討のために、転写産物である非コードRNAを分解させる実験を行う。この目的のため、ハンマーヘッドヌクレアーゼという配列を特異的に認識・切断するリボザイム配列をmlonRNAに挿入し、転写された後すぐに分解を受けるように加工する。このハンマーヘッドヌクレアーゼ挿入細胞でのmlonRNA転写状況や、その領域でのクロマチン構造の変化の状況、fbp1の転写状況、ade6-M26やSPAC24.06c上流領域での組換え状況、などを総合的に判定する。 また、fbp1の転写においては転写活性化因子(Atf1とRst2)の結合状況を、ade6-M26やSPAC24.06c上流領域での組換え状況では、組み換えの端緒となるDNA二十鎖切断導入酵素Rec12(Spo11のこと)の結合状況を確認する。この研究により、非コードRNA配列によらない普遍的分子機構として、「非コードRNAを転写するポリメラーゼがパイオニアとしてその通過領域のクロマチン構造を緩め、転写や組換えなどのDNAを基質とする反応の制御に寄与する」というパイオニアポリメラーゼ仮説を立証でき、普遍的メカニズムまで解明できる。
|
Research Products
(17 results)
-
-
[Journal Article] Construction of a human hTERT RPE-1 cell line with inducible Cre for editing of endogenous genes2022
Author(s)
N.L. Hindul, A. Jhita, D.G. Oprea, T.A. Hussain, O. Gonchar, M.A.M. Campillo, L. O'Regan, M.T. Kanemaki, A.M. Fry, K. Hirota, K. Tanaka
-
Journal Title
Biol Open
Volume: 11
Pages: -
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
-
[Journal Article] XRCC1 counteracts poly(ADP ribose)polymerase (PARP) poisons, olaparib and talazoparib, and a clinical alkylating agent, temozolomide, by promoting the removal of trapped PARP1 from broken DNA2022
Author(s)
K. Hirota, M. Ooka, N. Shimizu, K. Yamada, M. Tsuda, M.A. Ibrahim, S. Yamada, H. Sasanuma, M. Masutani, S. Takeda
-
Journal Title
Genes Cells
Volume: -
Pages: -
DOI
Peer Reviewed / Open Access
-
-
[Journal Article] XRCC1 prevents toxic PARP1 trapping during DNA base excision repair2021
Author(s)
A.A. Demin, K. Hirota, M. Tsuda, M. Adamowicz, R. Hailstone, J. Brazina, W. Gittens, I. Kalasova, Z. Shao, S. Zha, H. Sasanuma, H. Hanzlikova, S. Takeda, K.W. Caldecott
-
Journal Title
Mol Cell
Volume: 81
Pages: 3018-3030
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
-
-
-
-
[Journal Article] Follow-up genotoxicity assessment of Ames-positive/equivocal chemicals using the improved thymidine kinase gene mutation assay in DNA repair-deficient human TK6 cells2021
Author(s)
A. Sassa, T. Fukuda, A. Ukai, M. Nakamura, R. Sato, S. Fujiwara, K. Hirota, S. Takeda, K.I. Sugiyama, M. Honma, M. Yasui
-
Journal Title
Mutagenesis
Volume: 36
Pages: 331-338
DOI
Peer Reviewed
-
-
-
-
-
-
-
-