2021 Fiscal Year Research-status Report
Integrated approach for analysis of early human development using micropattern culture system and its application to disease research
Project/Area Number |
21K19242
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
阿部 訓也 国立研究開発法人理化学研究所, バイオリソース研究センター, チームリーダー (40240915)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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Keywords | ヒト初期発生 / iPS細胞 / マイクロ基盤培養 / 分化能検定 / シングルセル解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、1)ヒト初期発生過程を理解するため、マイクロパターン培養系を用いた再現性・同調性の高いiPS細胞分化の解析プラットフォームを確立し、ヒト三胚葉形成過程の詳細を記述する、2)発生過程の個体間偏差を画像解析・機械学習を用いて調査し、これを基に発生過程の標準 ベースラインを規定する、3)疾患由来データを標準と比較し、単なる偏差を超えた疾患に由来する表現型を検索し、疾患研究への展開を図る。 本研究では、マイクロパターン培養系を利用した分化系を用いるが、この系ではガラス基盤上に任意の形状で培養基質をコートし、このマイクロ基盤上でのみ、ヒトiPS細胞を増殖・分化させることが出来る。分化誘導開始後48時間の時点で、1)三胚葉マーカーに対する免疫染色を行い、その画像を基にして、画像処理、機械学習の手法を用いて各胚葉への分化細胞を検出し定量的に解析する系を確立した、2)マイクロ基盤上で分化した細胞を回収し、シングルセル遺伝子発現解析を実施し、クラスター解析等の情報学的解析を行なうことにより、分化細胞の種類、それぞれの細胞数に関する定量データを得た。この遺伝子発現解析の結果から、実際にこの実験系では、外胚葉、中胚葉、内胚葉への分化が起こっており、また始原生殖細胞に類似した発現パターンを有する細胞群も検出されたため、体細胞分化および生殖系列への初期分化過程が再現されていると考えられた。これまでに、健常人由来のiPS細胞株を複数解析した結果、各細胞株が持つ分化能は一様ではなく、各胚葉への分化の割合が細胞株によって変動することが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画どおり、画像データおよびシングルセル遺伝子発現データを基にして、細胞分化能の検定を行う、という手法を確立し、実際に複数の細胞株に関する分化特性データを取得することに成功している。これにより、今後、解析対象の細胞株を増やしてもデータを生産することが可能である目処がついている。また多検体のシングルセル解析をより高精度かつ低コストで行うための独自のサンプル多重化技術を考案し、特許出願を行うとともに、論文投稿も行い、現在改訂中であるなど、技術開発の面でも順調に進展している。ひとつ問題は、実験に使用しているマイクロ基盤は外国メーカー製であり、コロナ禍や戦争のため、供給が以前より不安定である点である。このマイクロ基盤は実験遂行のために必須のものであり、研究計画全体に遅延が生じてきており、今後も状況によっては影響が継続する危険性がある。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに、実験系が確立され各細胞株のデータが取得されてきており、今後は健常人に加えて、疾患由来iPS細胞の分化能に関するデータを取得していく予定である。またサンプル多重化技術をさらに改良し、固定化細胞への応用や、特定の遺伝子群の発現を検出するための技術開発など、シングルセル解析技術全般の高度化を推進する。次年度は、より多検体の解析を可能にする解析プラットフォームを確立し、大規模な遺伝子発現データセットの取得を行い、ヒトiPS細胞株の分化特性の取得、ヒト初期発生過程の基礎的知見の獲得に加え、疾患に関連する表現型の検出を試みる。
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Causes of Carryover |
本研究では、マイクロ基板上にて分化誘導した各種ヒトiPS細胞株を回収して、シングルセル遺伝子発現解析を実施する予定であり、多数の細胞株の比較検討が重要となる。そのため、当該年度は、出来るだけ多数の株からサンプリングを行い、次年度に遺伝子発現解析を一挙に行うよう計画変更した。当該年度は、サンプリング技術の効率化やこれまで得られているデータの解析に充て、ライブラリー調製、シーケンス解析の外注費用等に比較的多額の資金が必要な遺伝子発現解析については、次年度に集中して実施することとした。
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Research Products
(4 results)