2021 Fiscal Year Research-status Report
植物の原形質連絡の透過度を制御する謎の分子機構解明に挑む
Project/Area Number |
21K19247
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
藤田 知道 北海道大学, 理学研究院, 教授 (50322631)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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Keywords | 原形質連絡 / ヒメツリガネゴケ |
Outline of Annual Research Achievements |
原形質連絡(PD)は細胞壁を貫く小さな穴であり、様々な情報分子が移動している。近年、細胞壁多糖の1種、カロースの合成と分解の制御が重要であることがわかってきた。しかしカロース以外にも重要なPD制御系があると考えられてはいるものの、その分子機構は未だによくわかっていない。そこで本研究ではこの点の解明を進めるため、(a)2000種類の化合物スクリーニングを実施し、目的の化合物の選抜の終了を目指した。その結果、ほぼ全ての化合物のスクリーニングを終え、合計3種類の候補化合物の同定に成功した。また、(b)SnRK2の基質リスト、PDに局在するタンパク質リスト等公開データベースや公表済みの学術論文等を探索し、SnRK2の基質でかつPD制御に関わると考えられるタンパク質のリスト化を実施した。この結果、ショ糖輸送体、小胞体タンパク質(2種類)、呼吸系酵素、アクチン制御タンパク質等が同定できた。(a), (b)の調査から解析の優先順位をつけ、小胞体タンパク質の2種類(ここではA, Bと名付ける)とアクチン制御タンパク質Cを最有力候補と考え解析を進めた。SnRK2誘導性過剰発現株を背景に、これらのA, Bそれぞれのタンパク質の誘導性過剰発現株や遺伝子欠損株を作成した。またパラログを含めた多重遺伝子欠損株も作成した。またA, B, Cそれぞれの細胞内局在を可視化するため、蛍光タンパク質をノックインした形質転換株を作出し調査した。これらの研究の結果、いずれの場合もPD近傍での局在が観察できたが、PDそのものへの明瞭な局在は観察できていない。またまだ予備的段階ではあるが、SnRK2依存的なPD制御に関わる関与を過剰発現株や遺伝子欠損株のいずれにおいても見出せていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、原形質連絡(PD)を介した情報分子輸送の制御機構として、カロース以外の重要なPD制御系を明らかにすることを目的に研究を進めている。このため、今年度は、(a)2000種類の化合物スクリーニングを実施し、目的の化合物の選抜の終了を目指した。その結果、ほぼ全ての化合物のスクリーニングを終え、合計3種類の候補化合物の同定に成功した。また、(b)SnRK2の基質リスト、PDに局在するタンパク質リスト等公開データベースや公表済みの学術論文等を探索し、SnRK2の基質でかつPD制御に関わると考えられるタンパク質のリスト化を実施した。そしてショ糖輸送体、小胞体タンパク質(2種類)、呼吸系酵素、アクチン制御タンパク質等を選抜した。(a), (b)の調査から解析の優先順位をつけ、小胞体タンパク質の2種類(ここではA, Bと名付ける)とアクチン制御タンパク質Cを最有力候補と考え解析を進めた。SnRK2誘導性過剰発現株を背景に、これらのA, Bそれぞれのタンパク質の誘導性過剰発現株や遺伝子欠損株を作成した。またパラログを含めた多重遺伝子欠損株も作成した。またA, B, Cそれぞれの細胞内局在を可視化するため、蛍光タンパク質をノックインした形質転換株を作出し調査した。このようにほぼ計画通りに化合物スクリーニング、データベースを利用した候補因子の選抜を終え、解析するための変異体の作出に成功した。現時点では、候補タンパク質の3種類について、いずれの場合もPD近傍での局在が観察できたが、PDそのものへの明瞭な局在は観察できていない。またまだ予備的段階ではあるが、SnRK2依存的なPD制御に関わる関与を過剰発現株や遺伝子欠損株のいずれにおいても見出せていない。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、原形質連絡(PD)を介した情報分子輸送の制御として、カロース以外の重要なPD制御系を明らかにすることを目的に研究を進める。このため今後は、まずこれまでに作出した小胞体タンパク質の2種類(ここではA, Bと名付ける)とアクチン制御タンパク質Cのそれぞれについて、過剰発現株、遺伝子欠損株、細胞内局在のSnRK2依存的な表現型を注意深く調べる。そしてできるだけ早い時期に、これら候補タンパク質がSnRK2依存的なPD輸送に関与しうるかどうかの結論を出す。またカロース蓄積の有無も調べ、これらタンパク質によるPD制御がカロース非依存的であることを検証する。 これらの作業で有力な候補タンパク質を見出せなかったと結論づけられた場合は、選抜した化合物3種類について解析に着手する。化合物処理後のPDをTEMで観察しその変化を調査する。PDの穴のサイズ、形等、PD自体やその周辺構造の変化に着目し、評価する。この結果より、有力な目的候補化合物について光親和性標識法などにより化合物の標的タンパク質を探索する。この過程は化合物ライブラリーの提供者である佐藤綾人博士(名古屋大学ITbM)を研究協力者として進める。こうして同定した標的タンパク質について、遺伝子を単離し、この遺伝子の過剰発現株や欠損株などを作出し、SnRK2依存的、かつカロースに非依存的なPD制御に関わるかどうかの解析を進める。こうして同定したタンパク質の細胞内局在やストレス応答性、TEMによるPD構造の変化等を調べる実験を実施し、SnRK2の下流でこのタンパク質がどのようにカロース非依存的にPD制御に関わるのかを明らかにし、成果の論文発表に着手する。
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Causes of Carryover |
コロナ禍により研究の進捗や成果発表を延期したので次年度使用額が生じた。今年度はこれらの部分に対して使用を計画している。
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Research Products
(4 results)